うつ症状を家族に、5段階総合評価の「数字」で伝える。
- jeremmiemoonchild
- 2017年6月30日
- 読了時間: 6分
しばらくの間、精神医療というか、医療そのものと関係のない話題のブログ・エントリーが続いていました。
当初、ジェレミー・ムーンチャイルドというのは、薬物療法批判を中心に情報発信をしていくキャラクターと決めていました。「うつは心の薬害。」を書く中で、私自身の「話が逸れる性格」を正しているなかでできあがった方針だったと思います。結構ページ数の多い本となってしまいましたが、あれでも他に言いたいことは抑えていたのです。
無用にページ数が増えてしまうということだけでなく、薬物療法以外の自論まで展開すると、最小公倍数的に、同意・賛同いただける方が減ってしまうと危惧したためです。他のことにどのような意見を持たれる方であっても、薬物療法に関してはご同意いただける方を増やしたい、そういう風に考えたのです。
余計なことは書かない方針でした。
しかし、出版後しばらく経ち、ブログを進めるにあたり、考えが180度変わりました。なんでもよい、ジェレミー・ムーンチャイルドという人物に興味を持っていただければ、逆に薬物療法問題に興味を持っていただけるかもしれない、と考えはじめたのです。
科学論文を作成したわけではないので、その信憑性は作者の人間性にあるわけですから、あながち間違ったアプローチではないかもしれません。
本日は、久しぶりに精神医療関連です。うつ病患者のための「お役立ち情報」です。
すでに前置きが長くなっていますので結論を先に書くと、「精神疾患の場合、家族に自分の症状を理解してもらうのは困難である。5段階の数字だけで伝える方法がある」ということです。
5:まったく症状は感じない、健常者と同じ生活感覚。
4:症状は軽く、動きやすい。
3:ふつうに症状があるがなんとななる。
2:症状が重く、つらい。
1:危機的な状況。
症状は、身体症状から、精神症状までいろいろとありますが、ざっくりまとめて全体としてどうかということを数字で伝える、ということです。
朝、起きてきて、ボサボサ頭を掻き、ヨタヨタと歩きながら、食卓にいる家族に向かって、
「オハヨー、今日のパパは5段階で、2.5 で~す。」
などと言います。子どもたちは、
「2.5 は5段階ではありませーん。」
などと言います。これで良いのです。
「今日はどうか?」という質問に対して、全体評価としては、「まあまあ。」「ボチボチ。」「大丈夫。」「ダメ。」「OK。」などという言葉を使うことが多くないでしょうか。これが周囲にはわかりにくいようです。
私も自分の手帳には、△印+「まあ²」、△印+「ボチ²」という記述を使っており、前者の方が後者より良いという意味で長い間統一されているのですが、どちらが良い方なのか、妻は永遠に理解できないようです。ちなみに、△印+「まあ²」より上は、〇印+「OK!」です。
数字であれば、「お、ずっと2.5 だったのが、昨日は 3 になり、今日は 3.5 か。」ということが理解でき、「けっこう良さそうだね。」という共通理解に結びつきます。状態が理解されているというのは、患者にとって嬉しいことですし、家族にとってもサポートしやすいでしょう。
ここから先は、精神病患者はなぜ症状を周囲に伝えるのが困難なのか、ということです。これは、
1.自分自身での症状の把握が困難、
2.それを伝えるのが困難、
に大きく分かれます。
1.自分自身での症状の把握が困難
①症状が多岐にわたる
自分には今どのような症状があるか、を考えるとき、私はまず身体症状から確認します。精神症状は抽象的でわかりにくいからです。身体症状だけでも全身にわたりますので多様です。
まずは、手足、背中、腰などの筋肉など、外部的なものに目をやります。筋肉痛、関節痛などです。続いて、腰や首と全身の重さなど。次に内臓系、胃が気持ち悪い、腹痛、便秘、動悸、息苦しい、などです。そして、頭部です。頭痛、頭が重い、ぼうっとする、瞼がひきつるなどの顔面症状、耳鳴り、喉の違和感などもあります。
これらの身体症状だけでも多く、常に書き留めておくのは不可能に近いです。もちろん、薬の副作用も加わります。
次に精神症状です。
落ち込み、イライラ、不安、怒りっぽい、混乱、などのいわゆる「気分」も多岐にわたります。いくらでも形容詞が連なるでしょう。これの他に、記憶力低下、注意力低下、思考力低下、などの「脳の機能低下」があります。
②症状を把握する脳機能の低下
自分自身で症状を把握しにくい最大の理由は、この注意力・記憶力・思考力の低下が大きいです。上述したように、全身の症状に気を配るにはかなりの注意力を必要とします。うつ病患者はメンドクサイの塊で、何に苦しんでいるのかすらわからないことが多いのです。
2.症状を伝える困難
①患者側
患者は状態が悪ければ悪いほど、それを理解してもらいたいのですが、伝えるのはより困難な状況にあります。まずは上述の通り、自分が把握していないことは伝えられません。
また、伝えるには声を出す必要があります。健常者は気付いていませんが、これはかなりの労力を必要とします。危機的な状況では、本当に声が出ません。
発声と言っても、「あ~。」ではダメです。文章になっていなくてはなりません。うつ病患者は思考力が落ちているので、文章の生成能力も落ちます。
さらに、コミュニケーションには表情が重要ですが、状態が悪いと意図した表情が作れません。
考えてみれば、「把握していない、伝えるのも得意でない、」という患者の発言を精神科医が情報源としていることは、馬鹿馬鹿しい限りです。たとえばDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)という分厚い世界的な診断基準がありますが、元をたどればしょせんこれなのです。いかに多数の患者からの統計(Statistics)というスタンスを取っていたとしても、毎回の「どうですか?」の集積に過ぎません。そのような不確かな情報をもとに、患者を細かに分類し分厚い本にするのは、およそアート(芸術)の世界と言ってよいでしょう。
アートならまだ純粋でよいのですが、実際には薬を売るための偽の聖書(バイブル)といった方が妥当です。
さらに問題なのは、薬物療法が患者の注意力・記憶力・思考力を低下させ、さらに状況を悪化させることと、医師側が患者の改善(悪化)状態をこの方法ではきちんと把握できないことです。医師は、火を見るよりも明らかな悪化を目の前にして、はじめて別の病名を考えるしかないわけです。
話が逸れました・・・、戻します。
②家族側
家族にとっては、いかに思いやりを持っていたとしても限界があります。
原始生活において、病気は一定の期間で治るか、あるいは死ぬかでしょう。長い間、おもいやりの気持ちを持ち続けるように人間はできていないと思います。語弊を招く表現かもしれませんが、それだけサポート側や介護者も限界を感じています。
家族側は、患者の世話以外に日常生活を続ける必要があり、それに注意を向けます。そもそも、できることの少なそうな精神病患者の世話に注意を向けるメリットが感じられなくなります。順調に回復しない状況を把握することは、家族にとってもストレスなのです。
「うつは心の薬害。」で書いたように、患者の症状は株価のごとく予想不能です。量的に把握ができないだけでなく、上述した通り、患者から得られる情報は質的にも極めて気紛れで、本音では健常者には理解しがたいのです。
まとめ、
さて、そういうわけで、「伝えにくい、伝わらない」という状況に陥ることが多いとすれば、5段階総合評価の数字だけでもけっこう役に立つ、というのがこのブログ・エントリーでした。

もちろん、詳細な症状を把握できるようであれば、その方が良いに決まっています。できるときは、ぜひ、そうしてあげてください。
「うつは心の薬害。」で書いたように、スマホ・アプリで症状把握ができるとよいと思っています。限られた領域でなら、AIは間違いなく役に立てるでしょう。
ジェレミー・ムーンチャイルド
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