死者予測と実数の解離(都道府県別の分析)
- jeremmiemoonchild
- 2020年9月1日
- 読了時間: 7分
更新日:2020年9月25日
8月の下旬になって、年齢層別死者予測と実際の死者数に解離が出てきました。実数の7日移動平均(赤線)が12~13人くらいで10日間ほど停滞しているためです。予測では25人を超えるところまで指数関数的に一気に増えているはずのところです。その前に実数の伸びが予測を上回っていたので、誤差だと思っていましたが、少し停滞期間が長いので都道府県別に原因が無いか解析してみました。死者など少なければ少ないに越したことはないのですが、少なくなったのなら原因も知りたいですし、このまま死者の山が予測の半分の高さで済むのかどうかも気になります。

上のグラフは、NewsDigest社の年代別感染者数をもとに作られています。毎日、カーソルを当ててポップアップされる新たな数字を入力しているのですが、47都道府県でそんなことはできません。今回は、J.A.G. Japanさんが提供している数字をもとに行いました。また、死者数や検査数の都道府県別データは、東洋経済さんのデータを使用しました。
J.A.G. Japanさんのデータは、このように1行が感染者一人のデータで、感染者数分の6万行以上になります。これに、年代に応じた致死率(年代別CFR)の列を作り別表を参照させていれました。この個別CFRを都道府県ごとにピボットで足し上げるという方式を取りました。

まずは、8月2日から4週分を週毎で表を作りました。一番上の全国の数字は、ここでは8月2日の週を第一週とすると、実際の死者数が24日前のCFR総計と、最初の3週間はおよそ一致していることがわかります。(第1週:実数29、予測25.2、第2週:実数48、予測47.1、第3週:実数88、予測76.1)しかし、4週目の実数の伸びがありません。差分は4週目で大きくマイナス40.3人となっています。全国の数字への影響を見るため、ある程度大きなエリアに着目する必要があり、死者数、または予測数が4週間で5人を超える都道府県を灰色でハイライトしました。

もう少し見やすく、差分をグラフにしてみました。第1週と第2週です。実は、東京の死者数が予測よりも少なく、大阪を主とした他の地域で相殺されていたことがわかります。

第3週は大阪、愛知、沖縄で予測より多かったことがわかります。さて、問題の第4週ですが、大阪など予測より多かった地域が予測に近く、東京が引き続き、また埼玉、千葉で予測より少なかったことがわかります。4週目だけの解離の理由を問えば、関東ということになります。

全体として、どういう風に読み取れるのでしょうか?一貫して言えそうなことは、一番人口の多い東京の死者数が予測よりもかなり少ないということです。予測に対し、4週間で-60%です。
実は、気になる情報がありました。ふつう死者数がテレビで報道されれば、残念ながら亡くなった方が今日か昨日いらしたのだなと思います。ところが、亡くなってからそれが報告・計上されるまでずいぶん日数の立ったものが少なくないというのです。
こちらは、marupanさんという方が、東京の死亡例報告をすべて表にまとめたものをベースに作成した、死亡報告の遅れのグラフです。残念ながら、実際の死亡日が空白で発表されなかったものがかなりあります。3月まで、空白が2件ありますが、判明しているものは全て4日以内に計上されています。当時、どこの首長も初めて新型コロナの死者が出たときには涙を流して悔しがっていました。覚えている方も多いと思います。4月は患者数や死者数が増え、保健所などが多忙になったせいでしょう、104件中、35%の空白(死亡日不明)がありますが、それでも残りは7日以内に計上されています。5月になると、185件中なんと62%が空白で、最長で死亡日より25日も遅れて計上されています。平均で8日の遅れですが、中央値ですと3日です。

6月は死者も少なく、空白も5%に減り、5月のような遅延も少なくなりました。7月と8月は空白はありません。全数ですが多くの遅延が見られます。7月の死亡報告はたった7件ですが、5日以内に計上されたのは1件です。なんと43日後に計上された死亡例もありました。これは、新型コロナの陽性者に久しぶりに連絡を取ってみたところ、1.5ヶ月近く前に亡くなっていたと家族から聞いた件だそうです。8月もおよそ同様で、5から6日遅れて計上されるのがあたりまえになっています。このデータは8月26日報告までの分です。ようするに、当初大事に扱われていた死者数が、多忙と共に作業が遅れ、不完全になり、遅延は常態化したと考えられます。全国的なことはわかりませんが、こうしたデータ計上の遅れも考えられるわけです。

もう一つ考えられるのは、実際の年代別致死率が検査の拡大により減った可能性です。ニュースなどで耳にする通り、東京に限ったことではありませんが、第一波と比較して第二波では、人数ベースですでに2倍以上の検査を行っています。

若い人で、無症・軽症の陽性者も発見されるようになったということもありますが、その理由では、全体の致死率は下がりますが、年代別の、とくに高齢者の致死率が下がるわけではありません。実は、高齢者の陽性者にも無症・軽症が半分くらい存在することが、ダイアモンド・プリンセス号の全数検査でわかっています。関連の最初のエントリーでも使いましたが、こちらの表です。一番右の有症率でわかるように、高齢でも感染者の半数程度は無症なのです。(このデータでは、むしろ50代~80代の方が、20代~40代よりも無症状感染者の率は多いです。)したがって、第一波では高齢者の無症・軽症者があまり検査されなかったとすると、検査数が増えることにより、それらの方が検査されれば、年代別致死率自体が最大で半分になる可能性はあります。ただし、年代別致死率が下がったと考える場合は、なぜ8月の下旬から始まったのかという疑問は残ります。

一方、予測よりも増えた地域も考える必要があります。最初の表にあるように、4週間で予測よりも多かったのは以下の地域です。
大阪21.3人(+60%)、沖縄13.2人(+227%)、石川5.4人(+873%)、鹿児島5.2人(88%)、愛知4.6人(+21%)
沖縄など地方では医療体制が十分でなかった可能性があります。大阪や愛知については、まだ仮説ができてきません。同じ年代別致死率を用いた予測方法で、東京は-60%、大阪は+60%ということですから、なんらかの理由があるはずです。
せっかく、地域別の数字を出したので、今後の予測も見てみます。9月に入り、死者数に気を付けるべき都道府県をハイライトしました。死者が出るということは、その3倍などの重症者が出るということで、病院のひっ迫にも通じます。とくに、大阪、沖縄などすでに予測以上に死者が出ているところは、たいへん心配です。もしかすると、先の週の死者が早く訪れてしまったのかもしれず、その場合にはむしろ杞憂となります。あまり言及してきませんでしたが、福岡も気になります。

実は、仕事でもそうなのですが、地域別などの詳細な分析をすると、クリアカットには原因はわからず、かえってモヤモヤすることが多いです。それは、全体で見ていたものを47にも分解すると、それぞれの本質ではない個別事由が目立つようになり、かえってそのノイズにより全体像が見えにくくなるからです。それもあるので、いままで全国データに終始してきたのですが、今回はあえてトライしてみました。
根本的に私の予測が狂うのかどうかについては、まだ見守る必要があると思います。とくに今週のデータに注目しています。
2020年9月1日
ジェレミー・ムーンチャイルド
2020年9月2日 追記、
大阪の死者数の多さについて考え、やはり検査が少なく、重症度の高い患者に検査が偏っているのではないかと考え、人口当たりの検査人数を計算してみました。大阪の第二波における検査人数は東京、沖縄、神奈川に続き4位です。しかし、880万人を擁する同じ大都市でありながら、東京と比較すると64%でしかありません。この差が、高齢者の致死率に影響している可能性はあるでしょう。無症・軽症の陽性者が捕捉されていない可能性があり、さらに感染が広がる可能性があるということです。

ちなみに、自分の住んでいる神奈川の第一波における検査の少なさに驚いています。ダイアモンド・プリンセス号を受け入れた経験、早い時期での中等症患者対策、軽症患者用の宿泊施設など、黒岩知事が先手を打っていたように思えましたのが、神奈川県医師会など、PCRスンナ派に汚染されていた可能性があります。案の定、「神奈川県医師会からのお願い」なる書類がヒットしました。他国の努力を詳細に学ぼうともせず、誹謗中傷し、前向きな解決策を提唱せず、県民の健康を危険にさらした罪は重いですし、許せません。

Comentarios