新型コロナ:今後の重症者数について
- jeremmiemoonchild
- 2020年11月25日
- 読了時間: 9分
更新日:2020年11月30日
いままで、新型コロナの問題の根幹は高齢者の高い致死率であることを強調してきました。
もちろん、他にも重症化すればその間に苦しい思いをしますし、多くの後遺症が伴うとわかってきましたので、病後の生活に支障が出ることも問題です。ですが、人の死というものは、重症状や後遺症での苦しみに比べ、明らかにはっきりとした客観事実であり、また完全に取り返しがつかないことです。ですので、死者数の予測を使用して、多くの警鐘を鳴らしてきました。
しかしながら、とくに最近、重症者数が注目されるようになりました。重症者数が増えると、限られた医療資源がひっ迫し、新型コロナの患者のみならず、あらゆる医療の提供に支障が生じるからということのようです。もう一つ加えますと、無症状や軽症者数は、PCR検査数により変化を受けるのに対し、重症患者は必ず検査を受けると想定できるので、感染状況も正しく反映されていると言えます。
いままで、重症者数の定義が安定しているものなのかわからず、東京都が独自の基準を設けているなどの報道もあったため、私は重視していませんでしたが、東洋経済オンラインにデータがありましたのでそれを用いて予測を行いました。

<重症者数と死者数の関係>
重症者数は左軸で、日別の死者数が右軸です。第二波以降、この2つの山がだいたい合っている状態で、左右の軸を見ると、重症者数対死者数は20対1であることがわかります。つまり、重症者数の約5%が死者数であることがわかります。重症を経て死に至るわけですから、タイムラグがあるはずでグラフの頂点などを観察すると、およそ1週間程度ではないかと考えられます。
<5%の意味>
ここでこの5%の意味について誤解のないようにしておかなくてはなりません。これは、今重症患者として入院している方のうち、今日亡くなるのが5%という意味です。重症化しても5%しか亡くならないという意味ではありません。重症化した場合、その後は亡くなるか、軽快するかの2つしか道はありません。平均の重症患者としての入院期間を7日とした場合、大雑把に新規の重症患者数は7分の1になりますので、20対1ではなく、20/7対1となり、およそ3分の1となります。
<重症者数の予測>
死者数の予測を使用しました。死者数の予測は、年齢層別の感染者数に年齢層別致死率をかけて2週間遅らせたもので、死者実数を正確に予測できています。重症患者数の予測は信頼性の高いこの死者数の予測を21倍したものですので信頼できます。

現段階ですでにベッド数など医療資源のひっ迫、医療重視者の過労などが報道されていますが、現状の2倍の負荷に耐えられるものなのでしょうか?また、2倍で留まる保証はどこにもありません。これはもう、目前に迫る「医療崩壊」と捉えた対策が必要なのではないでしょうか。
<病床ひっ迫度>
厚労省のサイトには、このような資料がありました。全国での重症者用の確保病床使用率は13.9%となっており、菅総理あたりはこれをもとに、「まだまだGoTo」などと思っているのでしょうか?この資料は最新ですが、11月17日の重症者数276名の時のデータに基づいています。12月初旬には、この2.5倍の重症者数が予測されています。
その段階でのステージを予想しますと以下の通りです。
25%のステージIVとなる都道府県: 北海度、宮城、福島、埼玉、神奈川、兵庫
50%のステージVとなる都道府県: 東京、京都、大阪、沖縄
なぜ、ステージIVやVが起こることが明白なのに、それが起こるのを待ってから対策を取るのか、まったく理解できません。

<ECMOnet>
別の統計で、ECMOnetというのがあります。第一波のピークが318例、第二波のピークが202例となっており、およそ呼応していますが、11月24日は267例となっており、厚労省の統計より直近は少なめになっています。ECMOnetのカバーしていない病床に重症者が出ているのか、人工呼吸器の装着を必要としないが別の理由でICUに入っている人が出ているのか、理由はわかりません。

<ECMO治療>
ちなみに、エクモネットには、ECMO治療をした場合の年代別の転帰のグラフもあり、実施中を除くと、死亡は40代で14%、50代で22%、60代で37%、70代で49%となっています。80代では5件とそもそも適用例が極めて少数です。
そもそも、ECMO治療の実績は離脱186例、死亡82例、実施中36例となっており、合計で304例しかありません。新型コロナの死亡者の8割が70才以上であるのに対し、70才以上のECMO治療が2割程度ですので、肺機能を体外で行うECMO治療は新型コロナ治療の最後の切り札というイメージがありますが、体力の必要な治療で高齢者には向かないものと思われます。

<人工呼吸器治療>
実は、ECMOではなく、通常の人工呼吸器治療にも同様のことが言えます。死亡例は261例となっており、ECMOの死亡例82例を合わせると343例ですが、これは2,001名の新型コロナ死亡者の17%に過ぎません。つまり、新型コロナの死亡者の8割以上は人工呼吸器の装着をせずに亡くなっているのです。

しかしながら、ECMOを離脱した186例と人工呼吸器で軽快した896例を見ると、合計で1,082例は医療が無ければ酸素供給不足で亡くなっていた可能性があり、まったく医療が無かった場合を想定すると、現在の死者は2,000人ではなく、3,000人と1.5倍程度になった可能性があります。その場合、増える死者の年齢は60代以下が中心になり、その致死率が跳ね上がると考えられます。おそらく、それがメキシコのような医療不足状態での若年層での致死率の高さを表しているのでしょう。
<医療崩壊回避を目的にしてはならない>
そもそも、私は「医療崩壊回避」を新型コロナ対策の最上位とする厚労省のロジックには大きな疑問を持ちます。たとえば、新潟県十日町市で高齢者福祉施設に入居する人にPCR検査をするという報道資料があります。たいへん良いことなのですが、検査の必要性のところに、「医療体制の逼迫」を回避する旨が書かれています。

なぜ、「致死率の高い高齢者を新型コロナから守るため」とは書いてないのでしょうか?当たり前だからでしょうか?そうではなく、私はこれは今後の状況悪化を見越した厚労省や感染研のロジックだと思っています。彼らにとって重要なのは、高齢者の命ではなく、医療体制です。とくに、製薬の利権の代表者のような感染研にとっては、商品である薬を売ってくれる医療体制が重要なのであって、患者ではありません。
患者の命と医療体制とどちらを選択するか、というような状況が発生した場合、後者を取るロジック作りに余念がないのです。実際に、重症患者が多くなった場合には、トリアージで「高齢者は亡くなっていただく」というような意見が散見され始めていますし、さらに状況が悪くなった場合、究極的には
「医療者を感染から守るために、医療者は新型コロナの治療は行わない」
ということも念頭にあると感じます。そんな馬鹿なことはあるわけないと思われるでしょう。しかし、そもそも、日本の新型コロナ対策でPCR検査をしたがらなかったり、熱が出たら4日間様子見というようなことが言われたのも、同様の発想です。それで問題が自動的に解決するわけはなく、かえって院内感染を起こしたりしたわけですが、
「感染研を中心とした医療者の優位思想」
「患者の死に慣れ、それをなんとも思わない不感性」
「医療はビジネス」
といった異常な思想を持った人たちであることを意識した方がよいと思います。
<ゼロ・コロナを目指せ>
患者を第一に考えると、当然のことながらウィズ・コロナではなく、ゼロ・コロナに目標を設定するはずです。台湾、タイ、ベトナム、ニュージーランド、オーストラリアのようにです。努力はしたができなかったのでウィズ・コロナであれば、百歩譲ってまだ理解できますが、目標を立てたこともないので、努力があったはずもありません。また、短期間で制圧するゼロ・コロナが経済にとっても最善なのは自明です。
オーストラリアは一定規模の感染拡大を許しましたが、ロックダウンと0.1%の陽性率でも4万件のPCRを続けることで、完全制圧に成功しました。日本にとってわかりやすい例であり、ぜひこのようにしてもらいたいものです。先日、オーストラリアの首相が来日しましたが、菅首相がその方法について熱心に質問をしたという報道は影も形もありません。

2020年11月25日
ジェレミー・ムーンチャイルド
2020年11月30日 追記、
重症者数の予測を更新しました。死者数は30数人、重症者は650人程度で一旦急速な増加は頭打ちになります。

この感染拡大の頭打ちは、11月中旬の気温の上昇のための可能性があります。そうであれば、この傾向は1週間ほどしか続きません。

今朝のニュースでは「東京の最低気温が5℃台」と報じられ、以後12月の寒さはどんどん本格的になります。ということは、死者30名、重症者600名という状況から、12月の中旬以降に再度増加に転じると考えられます。政府は我慢だか、勝負だかの3週間と言葉ばかりの工夫で、ウィルスから見れば内容を伴わない「ザルの対策」だけです。その間に感染者数は増加を続け、年末にはまた2倍の「死者60名、重症者1,200名」というレベルの状況になるのではないでしょうか。かりに、西村担当大臣がほのめかしている「緊急事態宣言」が12月中旬に出たとしても、「時すでに遅し」でこれは変わらず、対策の影響が出るのは年明けになります。

重症者数と直接は関係ありませんが、忽那氏がまた良い記事を書いたので紹介します。「新型コロナで入院したらどんな検査・治療をうける?」という内容です。重症度の見分けはやはり飽和酸素濃度(SpO2)です。

治療については、やはり、①酸素を供給し続けることと、②抗ウィルス薬、③抗炎症薬しかありません。前述したように、①も人工呼吸器以上になるとリスクが大きく高齢者の適用は少なく、②も効果ははっきりしていません。③はサイトカインストームの抑制で死亡者を1割程度減らせます。つまり、医療にできることは少ないのです。
それでも、医師・看護師が必死になって助けようとしていること自体の意味は大きいです。「することないから」と見捨てられた状態と比べ、患者にとっては天と地の違いです。本来の医療とはそういうことで、これは個人のやる気だけにすべてを押し付ける「いわゆる精神論」とは決定的に違います。むしろ、真逆と言えます。人類は群れで生きる動物で、仲間の勇気付けや仲間が与える希望が「実際に生きる可能性」と結びついているのです。
当然ですが、感染拡大防止のための隔離も必須です。

まあ、その治療者の方も、あまりに不合理な政府の政策のなかで、やる気が続くのか、という内容のことも忽那氏は別の記事で書いています。あたりまえですね。治療者も人間ですから、見捨てられればやる気がなくなります。
もう一つ、こちらの記事では、レムデシビルについて解説しています。①の抗ウィルス薬の代表格で、軽症、中等症までなら意味があるかもというレベルです。

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