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新型コロナの季節性と日本の今後

  • jeremmiemoonchild
  • 2020年9月25日
  • 読了時間: 28分

更新日:2021年1月11日




<まだまだ、残る謎>


早いもので、今までに新型コロナに関するエントリーを13も書いてきました。できうる限り根拠となるデータを示し、論理的な整合性を保ちながら行ってきたので、自分ではかなり多くのことがわかったり、整理されたりしたと思っています。警告や予測が当たらなかったじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、その都度原因を解明して修正、改良してきました。読んでいる方は少ないですし、最大の読者は問題を整理したい私自身なので、なんら隠すことはありません。



さて、それでも新型コロナについては、わかっていないこと、「謎」はたくさんあります。


謎①: 日本を含む、東アジア・オセアニアの感染者が少ないのはなぜか?

謎②: 新型コロナには冬に流行る季節性はあるのか?

謎③: 日本の感染者数・死者数は今後どうなるのか?

謎④: 獲得免疫はどのていど継続するのか?

謎⑤: 自然免疫(T細胞云々)はどのていど役に立ったのか?

謎⑥: 世界的な終息はどのように起こるのか?

謎⑦: 新型コロナ・ウィルスはどこからきたのか?また来るのか?

謎⑧: 



<日本の経緯>


今回のエントリーでは、謎②の冬季季節性について検証し、謎③の今後の日本の感染動向について考えたいと思います。謎⑦についても触れます。


そもそも私は、新型コロナには季節性はないと考えていました。どうもそれは、私が日本に住んでいるからの様です。こちらは、Our World in Dataのデータから、真の感染者数を推計し、PCR検査情報も合わせて俯瞰できるようにしたフォーマットです。こちらのエントリーで各項目を説明しています。第一波が終息したのは、4月7日(全国は4月16日)の緊急事態宣言による行動自粛によるもので、5月25日にそれを解除したら、1ヶ月ほどしてまた首をもたげ、7月の第二波となったと感じるからです。つまり、新型コロナにとくに季節性はなく、対策がなければいつでも感染は拡大する印象がありました。ちなみに、第二波は第一波よりも小さかったのですが、他の国と比べると「似た大きさの波」である点が際立った特徴であることが後でわかります。



麻生副総理兼財務大臣が、5月12日の参議院財政金融委員会で、「これは、かぜで、はやり病だ。調べてみたが、スペインかぜも、7月になったら、だいたい止まっている。だから、この種の話は6月にはなんとなく収まるのかなと思わないでもない」と述べたニュースを覚えている方もいると思います。7月の感染拡大で、この「麻生予測」は見事に外れました。


世界の状況も、いつ覗いてみても、とにかくどんどこ感染者は増えており、とても冬季だけで終わる季節性を考えもしませんでした。


もう一つ、私の中での季節性の否定に貢献した事例を思い出しました。イタリアと同時に感染が広がった国にイランがあったことです。イラン⇒中東⇒砂漠⇒常に暑い、というイメージがあったからです。私の常識なんてこんなものです。今になって調べてみると、こちらがテヘランの気象データです。3月まで平均気温10℃切っています。たしかに、棒グラフの降水量は月間40mmと少ないので、砂漠のイメージは正しいのですが。






最近になって、フランスのエントリーで紹介したIvorさんの動画を見て、季節性について検証すべきと考えました。彼の多くの仮説に対しては、根拠が不十分で賛成できないと感じましたが、季節性については不意を突かれた感がありました。




<日本のインフルエンザの季節性>


まずは、季節性の強いと言われるインフルエンザです。こちらは、横浜市の情報で6年分を表していますが、4月の終わりにはほぼ消えることがわかります。


こちらは、島根県感染情報センターの情報です。北海道、東北など寒さが長引く地域でインフルエンザも長引く様子が見れますが、およその傾向は同じです。全国の死者数は流行により1シーズン数千人に上りますが、1~3月に集中します。




<世界のインフルエンザ>


世界に目を向けると、南半球では冬の時期が逆になりますが、基本的にシーズンオフにはインフルエンザは終息します。南半球と北半球で流行が重なる時期もあり、人の往来も多くなった中、ウィルスが南北を行ったり来たりして消える時期がないことが懸念です。


ヨーロッパの冬は厳しく、シャープな形です。日本を含む東アジアは、この年は夏にもインフルエンザの流行がありました。


メキシコだけでなく、南米でまとめると、実は季節性はわかりにくくなります。


アフリカも全土でみると季節性はよくわかりません。季節性インフルエンザといえども、熱帯地方では年間を通してみられるもののようです。



<インフルエンザの季節性の理由>


なぜ、インフルエンザが冬に流行するのかについて調べると、気温と乾燥というシンプルなものが目に付きます。


① 気温が下がると免疫力が落ち、鼻の粘膜などが感染しやすくなる。

② 乾燥は飛沫の浮遊時間と距離を長くする。


乾燥については、飛沫が飛ぶ際に細かな粒子が乾燥してエアロゾル化するのを助けるわけで、加湿器を売る人が言うように、湿度が飛沫にくっ付いて床に落とすわけではないと考えます。



これだけではありません。この件を調べると、必ずハーパー(G.J.Harper)という人の実験が出てきます。実に古い話ですが、1961年のAirborne micro-organisms: survival tests with four viruses という有名な論文のようです。ちまたに変なグラフで利用されているので、しかたなく原文を当たりました。4つのウィルスの浮遊状態での生存率を調べていて、インフルエンザ・ウィルスはその一つです。

左から、摂氏温度条件、相対湿度条件に分かれていて、0~23は時間で生存割合を%で表しています。50%を切るのを確認できた時間のところに私が赤枠を設けました。7~8℃の時は、湿度が50%以上でも半減に4時間かかりますが、20.5~24℃の時は、湿度が50%以上であれば30分で、32℃の時は、49%以上で5分で半減します。


つまり、インフルエンザ・ウィルスは、空気中に浮遊の状態で、気温の高さと湿度の高さに弱いことがわかります。ただし、通常の感染経路で4時間も経ってから感染するケースがよくあるものなのかは疑問です。どんなところでも、それなりに換気もあるわけですし、すこし広い空間では遠くまで拡散してしまいます。インフルエンザの場合に、あまり濃度は関係なく感染が起こるのであれば何時間も経ってからの感染もあるのかもしれません。もし、新型コロナの場合でも、密閉空間で何時間も後で感染するようであれば、対策を変えなくてはいけないと思います。




<インフルエンザの発祥>


これらに加え、インフルエンザの発祥も季節性に関わっているかもしれません。インフルエンザは野生の水鳥が毎年北極圏から運び、代表的には中国南部で飼われているアヒル、ガチョウなどを経由して、さらにブタに感染します。そこで人にも感染するタイプに変異して生まれるとのことです。この野生の水鳥~人への感染型までにどのくらい時間がかかるのかはわかりませんが、ここでも季節性が関与している可能性はあります。




<各国での新型コロナ>


さて、私たちが直面しているのは、インフルエンザではなく新型コロナです。上で紹介した真の感染者数のフォーマットで見ていきます。


ヨーロッパからです。ロックダウンを行わなかったスウェーデンが一番季節性を表している可能性があります。4月の初旬に真の新規感染者のピークがあり、そこから一定の速度で感染が減少しています。人口の8.66%(右上)が感染とあり、0.058%(左下)が亡くなりました。スウェーデンのエントリーでは、重要感染経路における「部分的」集団免疫達成ではないかと論じましたが、季節の影響が後押しした可能性もあります。日本のインフルエンザが1~3月に集中しているのを考えると、のんびりした季節性になりますが、スウェーデンは北欧で5月の半ばでも最高気温は15℃くらいのようです。



ヨーロッパで最初に感染が広がったイタリアです。真の新規感染者のピークが3月中旬にあり、そこから減少しています。3月~5月のロックダウンで減少したと思われていますが、季節性が後押しした可能性はあります。逆に言うこともできるかもしれません。ロックダウンは季節性を後押ししただけだと。


真の感染者数は死者数に国ごとの倍数をかけているので、波形を見るだけであれば死者数のグラフでも同じです。人口当たりの死者数の推移です。最近になって少し死者が出てきていますが、基本的にヨーロッパはどの国も程度の差こそあれ同じような経緯をたどっています。これが季節性なのか、ロックダウンなど対策によるものなのか、はたまた私のいう部分的集団免疫なのかはっきりはしませんが、季節性も排除できません。




南半球を見てみたいと思います。アフリカ大陸最南端の南アフリカ共和国です。アフリカ大陸は新型コロナを早期に対策した国が多く、あまり感染は広がっていませんが、南アフリカ共和国はその感染の6割を占めるアフリカのエピセンターだそうです。70才以上が3%しかいない国で、死者の655倍、人口の17.65%が真の感染者数というのがどこまで当たっているのかはわかりません。人口5,930万人で66.5万人の感染確認があり1.6万人が亡くなりました。ピークが7月下旬にあったことは陽性率からも間違いないです。3月から、陽性者は出ていたので、南半球の冬が来るまで新型コロナ・ウィルスが入って来なかったわけでもありません。ピークが日本で言う1月下旬だったことは新型コロナの冬季季節性が強く疑われる事例です。JETROのレポートによると、3月末にナショナル・ロックダウンが開始され、最上位の警戒レベル5から5月1日にレベル4に、8月18日からレベル2に緩和したようです。




ボルソナロ大統領が「コロナは風邪だ」と軽視し、自分も含め家族そろって新型コロナに感染し、夫人の祖母をそれで亡くすという、常軌を逸したリーダーの国、ブラジルです。ブラジルの国民には申し訳ないのですが、対策がハチャメチャなので季節性を見るにはよいのかもしれません。検査の情報も不十分で陽性率はありません。人口2.1億人、0.065%の13.9万人が亡くなっています。ブラジルも70才以上は人口の5%しかいないので、死者の395倍が真の感染者数となっており、なんと25.46%が罹患したことになっています。死亡率が10%になっていますが、医療状況、寿命などからこれが20%になれば、逆数を使っていますので真の感染者は半分になります。大きな国なのでピークが間延びするのかもしれませんが、5月中旬~8月中旬がピークのように見えます。これは、北半球で言う12月中旬~3月中旬です。ブラジルも冬季季節性が疑われます。



感染が少ないオセアニアの大国、オーストラリアです。2.5億人の人口がいますが、859人しか死者を出していません。少なくとも5月以降は陽性率を1%未満に長期間保ち、よく検査もしています。8月をピークに第一波よりも大きな第二波があった珍しい国です。マスクをしていない人に対する警察の対応の動画がSNSで非人道的だと批判されるように、同じ白人でも、コロナ対策に国民を挙げて神経質になっているのかもしれません。同じ東アジア・オセアニアの謎に入っており、オーストラリアの冬が次の日本の冬の参考になるのかもしれません。5月末の累計死者数は102人なので、冬はその7.5倍です。




<季節性はあるのか?>


他にも国はいっぱいありますが、対策がきっちりと成功している国はこの場合参考になりませんし、きりもないので大陸別の人口当たりの死者数のグラフを見ます。



ここまで見て、新型コロナに冬季季節性がないという方が無理があると思います。しかしながら、インフルエンザと同程度に強い季節性なのかはわかりません。また、インフルエンザは熱帯では季節性がなく、年中低いレベルで流行するのですが、新型コロナの場合、年中流行する地域はどの辺りまでなのか、細かいこともまだわかりません。




<新型コロナの季節性の原因>


新型コロナの季節性のメカニズムはわかっていません。インフルエンザと同様に、冬の室内はとくに乾燥するので、飛沫が瞬時に乾燥しエアロゾル化する可能性はあります。気温が低いと免疫力が落ち、吸い込んだエアロゾルが付着する部分が感染を受けやすい可能性もあります。


新型コロナ・ウィルスの温度条件、湿度条件でのサバイバル・テストも探しましたが見つかりません。1961年に可能だったテストを、なぜすぐに感染研などで行わないのかわかりません。1961年には、パソコンも、デジタル温湿度計もありませんでした。いまなら、はるかに洗練された検査機器があるはずですし、9ヶ月も経過して人類共通の大問題に対して、地球上の誰も行わないのは不思議でなりません。テレビで誰かが言っていましたが、科学というのは謙虚に自然を観察するものなのに、文献を調査するだけで、それ以上になにも努力しない学者が多いそうです。これでは人類の知恵は増えません。




<新型コロナの発祥>


当初、武漢の華南海鮮卸売市場に症例が集中していました。National Geographicによると、ここで扱われていた奇妙な動物のセンザンコウが新型コロナウイルスと類似のコロナウイルスを保有していることが、3月26日付けで学術誌「Nature」に発表されています。


また、この市場に近いところに、生物兵器を研究していると言われる武漢病毒研究所があり、意図的に拡散させた陰謀説、あるいは不慮の事故による漏洩が疑われました。トランプ大統領の「武漢ウィルス」なる執拗な中国への中傷に対して、中国外務省の趙立堅・副報道局長のツイッター投稿(3月12日)は以下のようなものです。「米国での最初の感染はいつか?・・・アメリカ兵が武漢に持ち込んだのかもしれない。・・・」


3月26日のWHOの「SARS-COV-2の起源」という文書には、武漢の研究所説を否定するように野生のコウモリやジャコウネコが可能性として挙げられています。



水掛け論になっている人工的に作られた可能性は横に置いて、素人的にはここに上げられた動物は渡り鳥よりはずっと素性がよいように思います。とくに、センザンコウであれば極めて生息地は限られています。コウモリも飛べますが、毎年数千キロを旅する渡り鳥ほどではありません。せいぜい数キロではないでしょうか。徐々に他の生息域のコウモリへと感染が広がるかもしれませんが、ゆっくりとしたものに思えます。とりあえず、いまのところ新型コロナ・ウィルスの発祥は季節性とは関係なさそうです。




<日本の今後>


季節性を考えると、日本は新型コロナの冬の実力をすでに経験したのか、していないのかが大きなポイントとなります。


今一度このグラフを見ます。日本での最初の感染者は1月15日です。実は1月の中国からの旅行者は前年比+22.6%の92.5万人もいました。その下の訪日客数を見ますと、2月のダイアモンド・プリンセス号の対応中、中国客は8.7万人、3月ですら1万人もいたのです。3月のイタリア人旅行者も1,500人近くいました。政府の水際対策のずさんさを批判したいのも山々ですが、十分に感染者が入って来ていたはずなのに、なぜ感染の爆発は4月からだったのかという疑問が沸きます。当時、私は極めて懐疑的でしたが、実はクラスター追跡が機能していたのかもしれません。それが破綻しかけていることを聞き、安倍首相が緊急事態宣言を発した可能性はあります。




そうだとすると、日本は新型コロナの冬の実力を経験するのは次の冬ということになります。オーストラリアの例で、冬は夏の7.5倍があてはまるとすると、ピークで真の感染者が1日1万人(2,000人 x 7.5 ÷ √2)、死者は第二波を600人として4,500人という可能性があります。




もちろん、抑え込みの努力(とくに徹底した検査と隔離)をすればそうならないかもしれませんし、オーストラリアの例の7.5倍はなんの根拠にもならず、はるかに大きな被害をもたらすかもしれません。ちなみに、10万人以上の日本の死者を予測していたワシントン大学のIHMEの予測は、なにをベースにどのようなアルゴリズムを用いているのかは知りませんが、いつの間にか下がり、今は年内9,720人となっています。あくまで年内なので3月まで予測すればまた何万人となるでしょう。



夏に起きた第二波について、季節性の観点からどう捉えればよいのでしょうか。7月に指数関数的に拡大していた新型コロナの感染が、8月上旬に止まり、縮小傾向になったことについては、猛暑のせいである可能性が現実味を帯びてきました。G.B.Harperさんの実験のように、30℃以上の気温に弱いのかもしれません。むしろわかりにくいのは、7月に長引いた雨季の間に感染が拡大した点です。30℃未満なら、湿度に関係なく感染拡大するものなのか、フィリピンなどからの陽性者が多く見つかりましたが、その空港検疫が甘かったのか、これは「謎」としてまだ残る問題です。



こちらはウィキペディアにあったものですが、インフルエンザの流行を、11月~4月(青)、4月~11月(赤)、年中(黄)に分けたものです。新型コロナに関しても、日本は冬型ゾーンに入るのか、実は年中(8月は除く)ゾーンに入るのか、という問題もあります。




<集団免疫>


諸説ありますが、私の計算では人口の0.18%しか感染していないので、日本人が新型コロナ・ウィルスの集団免疫を達成しているというのはあり得ないと思います。これは5%以上の感染者が出たヨーロッパとも大きく異なるポイントで、重要感染経路でも「部分的」集団免疫を達成していないと考えます。つまり、極めて脆弱な集団免疫状態のところに、完全封じ込めを目指さない中途半端な政策で非常に危うい状態と言えます。



過去の似たウィルス感染による交差免疫、または、BCGをはじめとしたワクチンによる防御が認められればそれはまったく別の話しです。おそらくそれが、頼みの綱の謎のファクターXなのでしょう。





<最後に>


ファクターXは単なる国民の「マスク好き」である可能性も排除できません。その場合、今後もマスクだけで冬季季節性の猛威を防げるのでしょうか?


新型コロナ・ウィルスには冬季季節性があるという前提で、「GoTo、GoTo」と浮かれている与党自民党を見ると、背筋の凍る思いです。麻生副総理の「6月には収まる」発言は7月に入り大外れでしたが、大きな意味で「季節性がある」は正しかったのです。そうだとすれば、冬が来る前にすることは他にあるのではないでしょうか。




2020年9月25日


ジェレミー・ムーンチャイルド




2020年9月26日 追記、


もう少し、気温の情報と合わせて見てみたいと思います。とりあえず、マップで見るのがよいと思いました。



<各月の人口当たり死者数と平均気温マップ>


1月末時点での100万人あたりの過去7日平均の死者数のマップです。月末を使うのは、実際には真の感染状況を知りたいからで、月の中旬の感染状況を見ていることになり、下の月平均の気温とおよそ呼応させるためです。


1月の段階では中国、それも武漢のみで流行していました。中国の人口当たりの数字には注意が必要で、本来は感染の8割を占める武漢の人口(1千万人)で割るところを、全土の人口(14億人)で割っているので、100倍以上にして考えるべきです。武漢の位置は中国の南の方で、太平洋上の台湾に向かってせり出している部分のちょっと陸側です。その位置に、小さく真紅があったのです。


1月の平均気温のマップです。気象庁から得たので日本がまん中で、アメリカ大陸の位置が右側になっています。武漢の1月の平均気温は一番薄い黄色で5~10℃です。あたりまえですが、南半球は夏です。




2月末の死者マップです。韓国、イタリア、イランに飛び火し、さらにフランスでも死者が出ました。


2月の北半球は最も厳しい冬の季節で、南半球は夏真っ盛りです。地中海沿いでも流行のあったイタリア北部は10℃程度です。日本でダイアモンド・プリンセス号のメガ・クラスターが発生したのは、横浜がもっとも寒い季節であったことは記憶すべきです。




3月末には、イタリア、スペイン、ベルギーが100万人あたり10人の日別死者数を越え真紅に染まっています。フランス、イギリス、スイス、オーストリアも2人を超え朱色に。イラン、スウェーデン、ポルトガル、アイルランド、米国も1人を超えました。


3月のヨーロッパは地中海沿いでは10℃以上ですが、北欧では氷点下です。米国も南部では10℃を越えますが、北部では5℃未満です。中東のイランの気候について触れる必要があります。上でも少し触れましたが、中東産油国の中でもペルシャ湾北側のイランは3月でも10℃未満で、サウジアラビアの20℃越え、アラビア半島先端のオマーンなどの25℃越えとはまったく様相が異なります。




4月末の死者数マップです。10人を超え真紅になったのは、イギリスとアイルランドです。フランス、オランダ、スウェーデン、米国が5人を超えました。フィンランド、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、トルコがヨーロッパでは1人を超えました。カナダとエクアドルで2人を超え、ブラジルとペルーで1人を超えました。


4月の平均気温です。上の死者数マップでイタリア、スペインの色が一段下がったのは、感染の順序と思っていましたが、暖かい地中海沿いの気候のせいかもしれません。地中海沿いではないベルギーは深紅のままです。この時期に南米の国に感染が広がっていますが、このマップ上では天気の変化はわかりません。




5月の死者数マップです。ヨーロッパのほとんどの国で落ち着いてきました。スウェーデンとイギリスがまだ2人を超えており、そこにロシアが加わってしまいました。寒いロシアで今まで感染が抑えられていたのは不思議です。米国が2人以上に一段階下がり、ブラジル、ペルーに加えメキシコ、チリも2人以上になりました。


5月の平均気温です。ヨーロッパは北欧を除き10℃以上、南欧は15℃以上です。チリは寒い国で、秋も深まり10℃未満です。



6月末の死者数マップです。ヨーロッパではスウェーデンだけが1人以上で、ロシアも0.5人以上に下がりました。中東でなぜか、イランとサウジアラビアで1人以上、間のイラクが2人以上です。南半球の冬になり、アフリカ大陸ではじめて、南アフリカ共和国で1人以上となりました。カナダが落ち着いた一方、冬のメキシコ、ペルー、チリで5人以上の赤色、ボリビアとコロンビアも2人以上になりました。


6月のスウェーデンはまだ15℃未満です。中東はイランでも20℃以上、サウジアラビアでは30℃以上ですから、気候からは説明できません。メキシコも沿岸は25℃以上で同様です。南アフリカ共和国は15℃未満で、唯一アフリカ大陸で流行した理由がわかります。メキシコは25℃を、ペルーも20℃を切りました。コロンビアとボリビアは20℃程度でしょうか。



7月末の死者数マップです。ヨーロッパはルーマニア、セルビアなど東欧諸国とカザフスタンなどで1~2人以上です。中東は収まる傾向ですがイランだけが2人以上です。南アフリカ共和国は2人以上に濃くなりました。南アメリカでは、チリが5人を切った一方、コロンビアとボリビアが5人以上に濃くなりました。


7月の平均気温は東欧、中央アジアは夏で20℃以上です。中東でイランがやはり残るのは、30℃を下回るからでしょうか。南アフリカ共和国は15℃未満で継続。南米も6月とあまり変わりありません。




8月末の死者数マップです。米国の例外を除き、北半球は全て、7月より若干死者数が減る傾向にあります。南半球は大きな変化はありません。


8月の平均気温です。7月と大きな違いはありません。




9月末の死者数マップです。秋になってスペインとイランが2人以上になり、リビアとオマーンが1人以上になりました。米国は継続です。南半球は春になり、死者は減少傾向にありますが、アルゼンチンが5人以上で赤くなっています。


9月の平均気温です。スペイン、イラン、オマーンは20℃前半です。アルゼンチンはもともと寒い国で、9月は10℃前後です。



<最大の課題>


死者数と気温の地図を眺めてきて、なにが言えるのでしょうか。その前に、なにを知りたいのかを考えます。100万人あたり1人の日別死者は、日本では毎日100人の死者を意味します。4月の下旬に25人を超えたことはありますが、100人でもその4倍でで、医療機関のひっ迫を意味します。100万人あたり10人となると、毎日1,000人の死者を意味します。完全に医療崩壊の状況が想像できます。そうしたことが、日本では起きないのかどうか、これが一番の課題だと思います。




<高い気温が感染を抑止>


その課題にすぐには答えは出せませんので、周辺から考えます。月別のところでコメントが無かったように、東アジア・オセアニアの国は、一度たりとも100万人あたり1人を上回っていません。フィリピンを含めてもそれが事実です。唯一の例外が、国ではありませんが発祥地の中国の武漢です。BCGか何か知りませんが、何か、ファクターXに守られているようにも思えますが、気温で一歩踏み込んで考えます。



たとえば、アフリカは赤道が中央を走っており、南アフリカ共和国を除き、その高い気温で新型コロナから守られているように思えます。エボラ出血熱などの経験から、早期に対策を取ったとも聞きますが、気温も貢献している可能性があります。中国と韓国を除くと、東アジアの国々は日本よりずっと温暖で、それがアフリカと同じように新型コロナから守っているのかもしれません。日本の8月の猛暑時に感染が縮小したのもうなずけます。ファクターXの一部は気候です。



もちろん、気温が高ければ絶対に大丈夫なわけではなく、アフリカと同じく赤道付近のメキシコ・コロンビアなど中米や8月の中東の流行は説明できません。これらには、暑さにもかかわらず感染を促進した他の要因を探す必要があります。



実は、この情報があれば日本の8月には使い道がありました。7月までに感染を減らせれば、8月は暑さを借りて「完全封じ込め」ができる絶好のタイミングでした。現実には7月に第二波を許してしまいました。6月より前に検査の拡大ができていればと思いますが、そもそも「完全封じ込め」を一度も目標にすらしていないのが問題です。




<魔の10℃>


逆に、100万人あたり10人以上という極端に悪い状況だけをピックアップすると、2月の武漢、3月のイタリア、スペイン、ベルギー、4月のフランス、イギリス、7月のチリ、ペルー、9月のエクアドル、ボリビアと限られています。おそらくこれに、4月の米国北部を入れるべきしょう。これらのケースの多くが、月の平均気温が10℃前後の時です。これは、「危ない温度帯」と考えられます。


日本の主要都市で12月~3月、仙台で11月~4月、札幌で10月~4月がこの「危ない温度帯」にあたります。



<氷点下>


氷点下など、それを下回るのがさらに悪いというケースは確認できません。しかし、そのような地域のそのような季節に感染が行きわたっていなかっただけかもしれません。1月末と2月末の死者数マップを見れば明らかなように、北半球の感染は中国だけでした。たとえば、北欧にもカナダにも、1月には新型コロナは存在していなかったのです。


南半球で南極を除くと、それほど寒くなるのは南米のチリとアルゼンチンなのですが、国が南北に非常に長いので地域別分析ができれば、氷点下の功罪がわかるのかもしれません。もし、氷点下が新型コロナの感染をさらに強力にすると考えた場合、北半球は武漢以外それを経験していないことを心するべきです。





2020年9月28日 追記、


チリかアルゼンチンを調べれば零度近辺の気温で、新型コロナの感染がより促進されるのか、抑制されるのかがわかると思い調べました。まず、チリはダメです。チリは南アメリカ大陸の西海岸沿いに細く長くある国で、南側をグーグルアースで見ると、いかにも切り立った崖の世界で、とても人が住めるところではありません。アルベルト・デ・アゴスティニ国立公園とあり、切り立った山脈がそのまま海に面している感じです。



<アルゼンチン:地域による人口当たりの死者数>


アルゼンチンを調べました。厳しすぎるくらいの対策をしたようです。英語でアメリカのグーグルで調べても地域ごとの数字は出てこないので、スペイン語で試しました。スペイン語はラテン系の言語なのでフランス語ににています。どうも、"Fallecidos por cada 100.000 habitantes por provincia"というのが、「州ごとの10万人あたりの死者数」ということがわかり、見つけました。こちらのサイトです。15,749人の死者の累計があります。


これは週ごとの累計の数字です。死者数の6割が首都ブエノスアイレスです。


人口10万人あたりにした死者数を黒丸の大きさで現わしたマップです。CABAという島が人口当たりの死者数がもっとも多く102.1人です。次がその左下隣りのブエノスアイレスで53.7人でした。興味の対象は、国の南北でどのような違いがあるかです。南端はTierra del Fuegoという州で35.2人と秘境の地としてはブエノスアイレスの65%と高いですし、Río Negro州の46.8、Neuquén州の21.2も高めです。北部にも高いところはあるので一概には言えませんが、やはり寒い地方が新型コロナの感染は多めで、少なくとも零度近辺の平均気温が感染の抑制に働くことはまったく無さそうです。



2020年9月29日 追記、


メキシコの気温は年中高いのに多くの死者を出していることに疑問を持ち、少し調べました。まずは真の感染者数フォーマットです。日本と似た人口で26.4%が感染したことになっています。70才以上は4.4%しかいません。


波形はブラジルに似ていますが、検査情報があるだけマシなのでしょうか。いいえ、患者が多いのに検査数はピークでも1日1.3万件程度で、陽性率がなんと50%をキープしています。710,049人の累計陽性判明者の内、10.6%にもあたる74,949人が亡くなっています。高齢者の致死率が10%以上なのはわかりますが、全陽性者の致死率が10%以上なのは見たことありません。ブラジルでも400万人の陽性者の中で死亡者数は3.5%です。メキシコは究極のPCRスンナ派なのでしょうか?



年代別の死亡率に関する論文がありました。Nが論文の対象となる102,985人の陽性者、N4が病院での死亡、N6がICUでの死亡です。詳しい割り算はしなくても、異常な状態であることは明白です。全体の25%の25,550人が亡くなり、その中に多くの40代(3,056人)、50代(5,820人)の死者がいます。60代以上の死者数は15,137人で59%に過ぎません。まるで、まったく異なる病気を見ているかのごとく、他の国とは違う死亡者の年齢構成です。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?



メキシコシティでは、なぜ若い人が多くなくなっているのか?」という記事がありました。そこにこの異常さの謎を解く鍵があります。なんと、政府が新型コロナは病院で治療しないので、自宅でやってくれ、娘に世話をしてもらえ、と言っているのです。実際に、危篤状態にならないと病院に来ないとも書かれています。少し驚く文面です。



まず第一に、政府は治療もしないわけですから、感染者の隔離という概念がゼロです。第二に、発症した患者ですら、なんら防具の無い自宅で看病しますから、必ず家庭内感染が起こります。第三に、若年層は無症者も多いでしょうから、若年層同士の集まりで若年層に感染が広がり、別の家庭で高齢者にも感染が広がります。これが、いくらい気候的に温暖で恵まれていても、感染が広がり死者が出続けるメカニズムです。


また、家庭内感染は発症者の飛沫をもろに受け、または濃いエアロゾルを長時間吸うので若者でも重症化するのです。それが、他の国よりも若い層でも亡くなる人が多い理由です。




あきれ果てんばかりの無責任政府の無能ぶりの最悪な例です。しかしながら、まったくもって他人事ではありません。


① 日本でもいまだに2万件しかPCR能力はありません。PCRスンナ派がいまだにウヨウヨとネット界隈には存在しています。

② 風邪症状の人は重症化するまで病院に来ないでくれと言っていました。無責任医療者が多くいるのです。トリアージできる発熱外来はどこにあるのでしょうか。

③ 新しい総理が国の姿として「自助・共助」を掲げました。無責任政府の露骨な開き直りです。

④ 高齢者を尊敬しろ、親の世話をしろというのは小学校の道徳でもよく聞く話題です。封建的道徳観の押し付けです。

⑤ さすがに、性差別的なことは最近は表立って言えませんが、実際には社会の隅々まで深く根付いています。




日本がメキシコの惨状から学ぶことは非常に多いと思います。




2020年10月15日 追記、


メキシコについて追記します。メキシコの政府のサイトを見ると、なんと日本の厚労省よりはましな情報提供をしており、年代別の死者数のグラフがありました。検査が少なく、CFRなど検査数に基づく数値は意味がないのと、高齢者人口が極端に少ない国なので、人口千人当たりに換算しました。いつも見る70才を過ぎると急上昇する致死率が見えません。



イングランド&ウェールズの死者数が同じ5才刻みで、人口千人当たりでありましたので、比較します。(イングランド&ウェールズは8月28日の週までの累計、男女を単純に足して2で割りました。)わかることが2つあります。


1つは、メキシコでは75才未満はイングランド&ウェールズよりも4倍程度人口当たり死亡率が多いことです。これは、上述した家庭内濃厚感染に加え、貧困などで栄養状態も悪いことも影響していると言われているようです。


もう一つは、80代前半は同程度ですが、それ以上の高齢者がメキシコでは世界の他の国の傾向と逆行して下がることです。平均寿命が75才、70才以上の人口が4.3%と長寿が困難な環境で生き抜いた人が特殊な免疫を持っている可能性、または過去のワクチンの影響などが考えられます。「100歳超のコロナ感染者が多数回復、118歳も重症化せず メキシコ」というようなAFPのニュースもあります。「100歳以上の高齢者計78人が同感染症と診断され、うち23人が亡くなった。一方で100〜118歳の少なくとも53人が回復」とのことです。原因がわかれば、高齢者の新型コロナの死亡を避ける方法が見つかるかもしれません。




2021年1月11日 追記、


長い間ブログは更新していませんでした。多くのことはすでにわかったつもりになっていましたし、もう大きな疑問を抱くようなことは少なかったからです。その間に、ヨーロッパでは冬への突入と共に深刻な第二波が進みました。そして、日本でも年末から急速に感染者が増え、東京都の小池知事などの要請により、2021年1月8日から日本で2度目の緊急事態宣言に入ってしまいました。


こちらが感染者数です。直近で急激に増えているのがわかります。(赤線の予測は緊急事態宣言の効果で1ヶ月間減る方向になったらこんな感じかなという程度のものです。)


死者数です。すでに確認された陽性者数から、日に80人以上の死者数が確実に予測(面グラフ)され、上の感染者数を描けば、青線のように2月の上旬に140人の死者が予測されます。




いったい何が起きているのでしょうか?気温が下がればそうなることは、このブログのエントリでわかっていましたが、どういう仕組みなのでしょうか?



いままでクラスターと呼ばれていたところは、ライブハウス、コールセンター、病院、高齢者施設、居酒屋、風俗などで、基本的にビルの中にあり、年中空調されて季節による内部環境の差はあまりないと考えられます。換気も基本的にはしにくい構造なのは年中変わりません。冬になれば外気温が低いため、空調で温めることにより湿度が下がるのは事実です。湿度の差だけで極端に新型コロナの感染効率が上がるのでしょうか?




私はむしろ、家庭内感染があらたな感染経路として重要な役割を果たすと考えます。最近になって、感染経路として家庭内が最大の経路であるこも挙げられています。




たとえば、我が家はとくに、夏場は昼も夜も窓を開け放ちます。多かれ少なかれ、多くの家で暑い時は換気量が多いのは事実でしょう。また、新型コロナの追跡を昨年の春ごろに行った結果、8割の感染者が他の人に移していないと言われました。つまり、もっとも濃厚な接触者である家族にも、換気量が多ければ移さないのです。



温かいとき:


居酒屋で父感染(無症状)

   ↓

家庭内感染なし




ところが、最高気温が10℃を切り、最低気温が氷点下にいたるようになると、一切換気をしたくなくなります。よほど注意して換気をしようとしても、大きく窓を開けるようなことは寒くて嫌になってしまいます。これで家庭内感染が成立します。家庭内感染が成立すると、その後いろいろな経路に発展します。


寒いとき:


居酒屋で父感染(無症状) 

   ↓

家庭内で妻に感染(無症状)

   ↓

妻の職場で同僚女性に感染(無症状)

   ↓

同僚の家庭内で子に感染(無症状)

   ↓

子の学校でクラスメイトに感染(無症状)

   ↓

クラスメイトの家庭内で母に感染(無症状)

   ↓



わかりますでしょうか?家庭内クラスターというのは規模は小さいのですが無数にあり、一人世帯を除きすべての人が必ず持っている感染経路です。お酒を飲む人だけが行く居酒屋とはまったく異なります。ここが感染可能になると一人の感染が必ず2人以上の感染となり、その後に続く可能性が飛躍的に上がるのです。


一方、家庭内の感染を予防するのは極めて困難です。感染者が出たとわかれば、部屋を分けるなど、最大限の措置はとると思いますが、無症状感染者が潜んでいる状況を常に想定して、常にマスクをして会話を最小限にするなど、おそらく実現は不可能に近いです。




今回の緊急事態宣言では、全国一斉休校を行いませんでした。これは大きな間違いでしょう。家庭内の感染を防ぐ方法が極めて困難な状況で、子供が学校でそれを広げる可能性は非常に高いからです。今は、季節が違うのです。小さな子を預けられないと、医療者も仕事ができないという問題があることは知っています。だとしたら、なんとか自立できる年代の中学校と高校は一斉休校にすべきだったでしょう。




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