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新型コロナ対策で日本が見習うべき国々

  • jeremmiemoonchild
  • 2020年8月24日
  • 読了時間: 13分

更新日:2020年9月25日

原因ははっきりしていませんが、東アジアの国々は西欧諸国よりも新型コロナの感染者数や死者数において100倍近く少ないことを、関連の最初のエントリーで述べています。その中で、日本はけっして成績の良い方ではないことも指摘しました。テレビなどでは欧米などに比べて結果的には日本の状況はずっとよいという専門家や政治家などの意見が聞こえてきますが、ダメな国のダメな時と比べて安心するなどもってのほかです。現状を改善するには、よりよく対応した国々を見習うべきです。


WHOでは日本はオーストラリアやニュージーランドを含む、Western Pacificというリージョンに属しています。これによると、100万人あたりの日本の累計感染者数は433人、死者数は9人となっています。これは8月16日付けのWeekly Epidemiological Updateですので、第二波真っ只中の日本は近い将来もっと数字が増えます。とくに死者数は2倍になると繰り返し述べているように、100万人あたり9人の死者は近々18人以上になります。それを念頭に考えると、フィリピン、オーストラリア、シンガポール以外は、すべて参考になる国々のようです。加えて、政治的理由により、WHOで独立の国や地域として扱われていない台湾があります。(致死率が極端に低いシンガポールについては、すでに専用のエントリーを書きました。)


WHOには悲惨な状況の代表格であるインドのあるSouth East Asiaというリージョンもあります。赤枠で囲った国々は参考になりそうです。


ここで、日本が見習うべき国というのはいったいどういう国なのか、考えてみます。理想的なことから考えることにより、論理的な視野が広がります。


①「鉄壁防御国」:

新型コロナの国内への侵入をほとんど許さず、わずかな侵入もすかさず封じ込めた国


②「強力封じ込め国」:

新型コロナの国内への侵入を一定規模で許してしまったが、その封じ込めに成功した国


③「着実進展国」:

新型コロナの国内での大規模感染拡大を許してしまったが、着実に封じ込めに向かっている国


日本は3つの水際対策で失敗し、まず、①「鉄壁防御国」となる資格を失いました。


 a) 武漢での新型コロナ勃発後の入国管理

 b) ダイアモンド・プリンセス号の乗客の扱い

 c) その後のヨーロッパからの入国管理


これらは、変異を続ける新型コロナの株の遺伝子分析からも国内侵入が確認されています。



そして、6月までに19,000人強の感染者と1,000人弱の死者を生んだ第一波が終息に向かった段階で、②「強力封じ込め国」になる資格があったのですが、7月以降それを超える第二波の中にいるため、それも失いました。現在、③「着実進展国」であるとすら、胸を張って言える状況とは到底言えません。



それでは世界に、①「鉄壁防御国」に類する国はあるのでしょうか?こちらは、Our World in Dataにある人口100万人以上の158の国から、もっとも新型コロナによる累計死者数の少ない国々です。死者数に着目したのは、検査能力により大きく異なる結果が出てしまう感染者数よりも、死者数の方が信頼性が高いと考えたからです。10人を超える累計死者数の国は、ほぼすべて1,000人以上の感染者を許していることから、これら11の国々が新型コロナ対策でチャンピオンとなります。もちろん、新型コロナの死者数がきちんと把握されていなかった可能性なども個々に確認すべきですが、太字の東アジアの国が多いことに気が付きます。日本が見習うべき①「鉄壁防御国」です。


次に、上記の国々を除き、データを7月1日までと、それ以降に分け、7月2日以降の死者数が少ない順に並べました。簡単に言えば、武漢での新型コロナの勃発以降半年も経てば、何が起ったにせよ、なんらかの方法でそれぞれの国が対処し、その国民の命を守れたのではないか、という仮説を基づきます。実際には、驚くほど多くの国で、7月2日以降は死者が一桁であるのがわかります。②「強力封じ込め国」と言ってよいでしょう。上位にニュージーランドとタイ、シンガポール、マレーシアがあります。


同じリストの続きです。ベトナムは長い間死者ゼロの優等生でしたが、最近になって不幸にも不法入国者によると思われる感染が判明し、死者を出したので韓国のとなりです。国土の広い中国も見えます。よく見ると、ヨーロッパの国すらも散見されますが、7月2日以降の死者数はまだ2桁です。このあたりまでは、②「強力封じ込め国」と言ってよいでしょう。日本はまだ見えません。



さらにリストの続きで、ようやく日本が見えてきました。7月2日以降の死者数が201人というのは、158の国の中で92番目に多いのです。しかも、私(だけ)が警告していることのようですが、今後、第二波の死者数が1,000人を超えるのは火を見るよりも明らかです。島国根性の日本にいると、その中で起こってしまったことはあたりまえのように感じてしまいますが、いかに第二波は許すべきでなかったのかがわかると思います。



リストの続きにはもっと悪い国があり、7月以降何万人も死者を出しています。こちらは、すべての国を横軸に7月1日まで、縦軸にそれ以降の死者数を、それぞれ対数で置いた分散グラフです。対数グラフでは数値ゼロの値は表示できませんので、左下の良い成績の国々はあまり見えません。右上に、感染の制御ができていないダメな国の代表格、アメリカ、ブラジル、メキシコ、インド、ペルー、コロンビア、南アフリカなどが並びます。どれも、7月1日までに1万人以上の死者を出し、それ以降もさらに1万人以上の死者を出した国です。


一方、斜めに「99% Reduction (削減)Line」があります。7月1日以前よりも、その後の死者数が100分の1以下を示す線です。これを下回る国はありませんが、限りなく近づいているのは、かつて悲惨な感染状況の象徴であったイギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ベルギー、オランダ、アイルランド、スイス、デンマーク、フィンランドなどのヨーロッパ諸国であることがわかります。これらのヨーロッパ諸国は、③「着実進展国」といえるでしょう。


残念ながら日本は、第一波を超える死者数になりますので、近いうちに「No Reduction Line」の上を超えます。いまや、「我が国は民度が違うので」などとふんぞり返っている場合ではなく、まちがいなくヨーロッパ諸国にすらも教えを乞う立場なのです。




それでは、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?今後はどうすればよいのでしょうか?


なぜと言われても、政府の愚策としか言いようがないのですが、一番は「断固として感染を終息させる意思」が政府にないからだと思います。「コロナは風邪」「完全制圧など不可能」「そのうち終わる」「ウィズ・コロナ」「経済とのバランス」などという曖昧な、楽観論だか、悲観論だかわからない事実も論理も推論も滅茶苦茶に入り乱れた言動が飛び交う中で、無責任に利権を追及する輩を許し、それが政策にまで反映されている状況だからです。70代が罹患すれば10%以上、80代以上が罹患すれば20%以上が亡くなる感染症なので、「絶対に撲滅する」という強い決意が必要です。そのような決意を政府から聞いたためしは一度たりともありません。


何をすればよいかは明白です。第二波でこのグラフの死者が出ることは避けようがありませんが、減少傾向が見え始めた中、それを継続させ、死者数も感染者数もできるだけ早くゼロに近づけ、二度と再拡大を許さないということです。



具体的な感染の抑制方法は大雑把に言って、以下の3つです。


1.水際対策(感染者を入国させない)

2.行動抑制(一般人のヒトからヒトへの感染機会を減らす)

3.検査と隔離(感染判明者から他の人への感染を阻止する)



1.水際対策


我が国は水際対策を失敗したという強い反省をもとに行動すべきです。


オリンピック開催をしたかったからなのか、インバウンド需要を継続的に享受したかったからなのか、習近平国家主席と会談したかったからなのか知りませんが、感染者の入国阻止に遅れを取りました。今は、ビジネス目的の往来を再開させようとしています。東アジアの中ではどちらかというと日本が一番危ない状況ですので、感染の危険が増すのは相手国かも知れませんが、失敗を反省しない限り、同じような動機で同じような失敗をする可能性が十分にあります。


東アジアには、カンボジア、ミャンマー、台湾、ニュージーランド、タイと水際対策に大成功した①「鉄壁防御国」の国々がありますので、先進国のプライドを捨て、頭を垂れて教えを乞うべきだと思います。多くの概念的、技術的な知恵を得ることができると思います。




2.行動抑制


一部には、「クラスターフェス」などといって、マスクをせずに集まる者たちが出てきましたが、日本人の衛生観念、他者への配慮、協力性、同調性などが、極めて高く、感染制御に役立っていることはまちがいないでしょう。それが実証されたのが、強制力が低いにもかかわらず感染の縮小を実現した4月~5月の緊急事態宣言です。当時はあまり厚労省の発表を信じていませんでしたが、その後の死者数のデータとぴったり合うので、少なくとも高齢者の感染者数が減少したことは間違いありません。若年層は把握していなかったことは後述します。


当初、接触感染が主で、飛沫・エアロゾル感染は可能性に留めていましたが、いまでは厚労省も正式に逆を認めています。そうであれば、できるだけ多くのシーンで、「大声を上げない」だけでなく、「話をしない」というキャンペーンも必要でしょう。店舗などでは、従業員も顧客もできるだけ声を出さずにコミュニケーションが取れる工夫が必要です。また、長い間大声になってしまう飲食店での酒の提供の制限は「絶対的に必須」です。



東アジア諸国では、行動制限に関して、ITを駆使した取り組みがなされています。個人情報の保護、人権の問題から即座に導入できるものはないかもしれませんが、他国での真剣な取り組みを一つ一つ学び、日本でも可能なものに変更できないかなど、検討をしている部門は日本にあるのでしょうか。



新型コロナの患者がいる病院の院内感染も常に大きなリスクがあります。どういうわけか、極端に遅れているのが、医療機関の援助です。最前線で戦うものには補給もしないというのが、戦前回帰趣味政権による日本の流儀なのか知りませんが、悲惨な状況から立ち直ってきたヨーロッパ諸国に学ぶべきでしょう。



行動抑制は、経済的な犠牲を払うと考えられています。それはひたすら近視眼的な見方です。実際には、さっさと新型コロナを封じ込めた国だけが成長を享受できるのです。政治家が経済と思っているのは、献金元の企業業績という偏ったミクロで超短期的な世界です。こちらは、IMF(国際通貨基金)のWorld Economic Outlookの6月レポートでGDP成長率を表します。ユーロ圏は-10%、日本は-5.8%のマイナス成長となっている中、アセアン原加盟5か国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)は-2.0%とマイナス成長幅が小さく済んでします。東アジアでもっとも感染がコントロールできていないフィリピンを除けば、-1%台だったでしょう。今後のレポートでは、もっと感染抑制に成功した国とそうでない国の経済成長の差がはっきりと見られることでしょう。



ちなみに、私の「長期予測」は8月中は新規感染者数が上がり、9月1日に再度緊急事態宣言が発令されるというものになっていましたが、現実には外れ続けています。政府の専門家も感染日ベースで7月27日ごろを頂点にピークアウトしていると認めました。7月中に指数関数的に伸びてきた感染が、GoToキャンペーンや、お盆での帰省、会食などの感染拡大要因もあったなかで、8月に抑制された要因はいったい何でしょうか。


8月の感染抑制の要因(仮説):

・猛暑による行動抑制

・各首長の対策(東京都の酒類提供飲食店の時短など。)

・お盆での仕事休み

・子どもの夏休み


冷静に考えてみると、やはり、暑さではないでしょうか。天候はいかなる人為的なキャンペーンよりも影響が大きいとマーケティングでも言われます。


猛暑が8月の感染抑制の主たる原因と考えた場合、中期予報では9月の第一週までは東京で30℃以上が予想されていることから、その辺りを一つの谷として、再度感染が拡大する可能性があります。こちらは、その後10月1日緊急事態宣言の再発令というシナリオです。

こうならないために、早く対策を打ちださないといけないのですが、安倍総理は自身の体調管理のための通院にのみ忙しく、本件でリーダーシップを発揮する意欲を失い、完全に政治的なタイミングを逸しています。




3.検査と隔離


日本が第二波を許してしまった最大の理由はPCR検査体制と検査方針です。


「検査は保健所が判断」

「検査は医師が認めたものを」

「濃厚接触が条件」

「無症状者には不要」

「全数検査はもってのほか」

「治療法の無いものには無駄」

「検査せずとも自粛は続けるもの」

「検査は費用が高すぎる」


これらはすべて間違いです。感染の可能性の高い人を優先するのはあたりまえですが、検査は多ければ多いほど良いのです。人類が誕生して以来、問題の解決に情報は多ければ多いほど良いと決まっています。擬陽性と偽陰性についてはこちらの(4.対策)ですでに述べた通りで、前者は陽性判定者すべての再検査、後者は偽陰性についての注意を陰性判定者にすれば問題ありません。



PCR検査の目的は4つあります。


A:治療(その患者を診断し、治療をして救うため)

B:隔離(その患者から他の人に感染させないため)

C:感染状況把握(過去に行った対策を評価するため)

D:組織防衛(特定の組織の機能を維持するため)

日本はAの重症者の治療に重きを置いた検査方針でしたが、Bの隔離についてすら、見つけてしまったものは仕方なくという感じで、積極的に無症・軽症者の隔離のためにPCR検査を行ってきませんでした。Cの感染状況の把握ができていなかったことは後述します。Dは医療、スポーツ、演劇、自衛隊などそれぞれが行うものです。


さて、日本で無症・軽症の感染者を見つけてしまったのは小池知事です。6月に入ってから、5月末に再開された「夜の街」をターゲットとして調査をしたところ、若年層の感染者をわんさと見つけてしまったのです。もっと早くに徹底的な検査体制により隔離すれば、感染は終息に向かったでしょう。。


人口1,000人あたりの検査数の推移です。日本は7月に入ってからようやく検査数を伸ばしました。一方、韓国は当初から高い水準を保ちました。それでも、タイや台湾よりは日本の方が人口当たりの検査数は多いではないかという指摘があるかも知れません。


こちらが陽性率で見たものです。検査をして陽性だった人の率で、低ければPCRスンナ派は「無駄打ちが多かった」というかもしれませんが、実際には「徹底している」ということです。ほんのわずかな感染者も、見逃してしまえばその後10倍、100倍、1000倍と広がる可能性があるからです。当初から指摘しているように、タイや台湾の感染者数は格段に少ないです。それでも、少しでも怪しければ検査を惜しまない姿勢が見て取れます。混乱時の欧米の数字から、日本では陽性率は4~5%くらいが適当であるという雰囲気がありましたが、韓国、タイ、台湾での標準は0.4%くらいのように思います。日本も第一波の後に陽性率は1%前後まで下がっていますが、その前からさらに検査対象を広げて、少なくなった感染者を徹底的に発見・隔離していれば第二波は避けられたと思います。合理的根拠に基づき、学ぶべき相手を選ぶべきです。


感染の制御が着実に進んでいる、5月以降のヨーロッパ諸国を見ると、やはりもう今では日本よりはるかに低い陽性率で検査を進めており、とくに感染制御の上手く言っているフィンランド、デンマークなどでは0.5%以下を目指しているように思います。




さて、少し読みにくい内容かも知れませんが、世界の国々の様子も少しはお分かりいただけたと思います。日本は東アジアの謎の好条件に恵まれていて、おそらく今からでも「完全封じ込め」はやればできることです。日本政府には、意固地にならずに人類の知恵をあらゆる国から得て、迅速柔軟に導入していただきたいと思います。


カタツムリのように徐々にでいらいらしますが、正しい方向に向かっているようにも思いますので、それが加速するよう、私も情報発信に努めます。




2020年8月24日


ジェレミー・ムーンチャイルド




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