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サンゴ水槽の新しい水温管理について

  • jeremmiemoonchild
  • 2023年4月2日
  • 読了時間: 9分

更新日:2023年4月6日

<はじめに>


 私は趣味の一つとしてリーフ・アクアリウム(サンゴ水槽)を維持しています。以前はクマノミなどの魚も泳いでいましたが、究極のズボラ水槽にすべく、今はプログラム・タイマーで光さえ与えていればエサを与える必要のない好日性サンゴだけとなっています。エサを与えてしまうと、いかに濾過を完ぺきに(還元濾過まで)行っても、リン酸は除去できないので水替えが必要になってしまうからです。


 正確に言うと、月に1粒のエサをもらえるスベスベサンゴヤドカリは住んでいて、せっせとお掃除をしています。そんなリーフ・アクアリウムの水温管理について、新しい方法を考えてみました。




<いままでの常識>


 サンゴ水槽の海水温の管理と言えば、どの本やホームページなどにも24℃程度と書いてあります。実際、私も15年以上、24.5℃プラス・マイナス0.5℃で管理していました。装置も単純で、一つの温度センサーが水温を計り、サーモスタットにより制御します。冬であれば、目標温度より0.5℃低くなれば、水槽内に投げ込んである電気ヒーターが作動し、目標温度まで上がれば停止します。夏であれば、目標温度より0.5℃高くなれば、配管で水槽水が常に循環している外付けのクーラーが作動し、目標温度まで下がれば停止します。


 これにより、冬場は24℃~24.5℃、夏場は24.5℃~25℃、中間の時期では24℃~25℃の範囲で、制御による上下の繰り返しはあるものの、一年中狭い範囲で保たれています。




<日海センターにて>


 先日、町田に用事があり、ついでに「日海センター」という海水魚ショップにはじめて寄りました。日本でも珍しく、脱酸素・還元濾過剤を売っているところで、古くからクマノミの孵化のノウハウを提唱している、マニアの一部では有名かも知れないショップです。


 店に入ってすぐに気が付いたのは、冬なのに上着を着ていられないほど店内が暑いことです。店主と話していると、空調が高めに設定されているだけではなく、水温も30℃にしているというのです。その方が生体は元気だし、そもそもサンゴ礁に泳ぎに行ったとき、そこまで冷たくないというような趣旨のことを言っていました。また、一般に24℃などで管理している理由は、その方が魚が病気になりにくいからで、その意味はあるにはあるのだけど、そもそも、濾過を完ぺきにすればそうした問題は起きないとのことでした。また、水槽水がいわゆる「磯の香り」がしていたとすると、それは濾過が不十分な証拠で、このショップの水槽水は匂わないでしょ?と笑っていました。




<電気代を減らせるぞ>


 家に帰ってから、本件を考えていたところ、たしかに、夏場に水温を上げられれば、クーラーの稼働を減らせるので電気代は少なくなるな、とか、でも1年中水温を高くすれば、冬場にはヒーターの稼働が増えていままでより電気代は上るな、などとケチな電気代のことを考えていました。


水槽も大きくなく、たかが100Wのヒーターなのに、「電気代なんて気にするの?」と思う方も多いと思いますが、100Wでも24時間点け続ければそれなりの金額になります。1kWhあたり40円として、


100W × 24hour × 40円 ÷ 1000W × 30日 = 2,880円(月間)


毎週、ラーメン1杯食べられる金額ではありませんか?さらに、クーラーが300Wだったとすると、夏場はこれの3倍のベースになります。実際には、稼働時間により、これの何割ということになりますが、設定温度を室温に近くすれば、その稼働時間を減らせるということです。


 当然の成り行きとして、ケチな私は、だったら、夏場だけ水温を上げて、冬場は下げればいいんじゃね?と天才的な思い付きをしました。そもそも、自然界でも季節による変化はあるだろう。いや、年中同じ水温の方が不自然で、むしろストレスかも知れん。人間もぬるま湯のような環境での生活が長く続くと、かえって不調になる。(自分のことか?)多少のストレスに対抗するのが健康の素。素潜りで潜っても、深さによって急に冷たくなったりする。当然、波や潮の流れ、潮位の変化でサンゴ礁に当たる水温変化は結構あるはず。などと、ケチ持論の正当化を試みておりました。




<海水温の年間変化>


 そこで、サンゴ礁において、海水温は年間にどの程度変化するのかを調べました。そもそも、サンゴ礁があるようなところは、海底の冷たい水が上昇してきているところが多く、それにより気温よりは低い海水温となっています。この辺は、海洋深層水についての仕事で知っていました。沖縄で32℃の気温の日が続いても、すぐにサンゴが白化現象で死滅するわけではないのはこのためです。ですが、気温や太陽の輻射熱にまったく左右されないこともないはずです。当然、浅場では深場よりも影響を受けるはずです。


 サンゴ礁の海水温を調べようとすると、すぐに地球温暖化の話しばかりがヒットし、なかなか季節変化にはたどりつけませんでしたが、海上保安庁に「沖縄の海洋情報」というHPがあり、そこに以下のグラフがありました。


※「沖縄美ら海水族館」の御協力を得て、毎週金曜日の午前10時頃に同水族館沖合300m地点の水深20mからポンプにて採取し、配水管を通じ水槽に入る直前の海水温


 これが、サンゴ礁の水温だと仮定した場合、冬場の2月は20℃まで下がることはあるし、夏場の8月には30℃まで上がることはある、ということになります。そこまでは、おそらくワイルドな世界での過酷な限界水温で、ひ弱な人工環境のタンクメイトたちには理想的ではないかも知れません。




<年間スケジュール>


 とはいえ、過去平均を見る限り、冬場23℃、夏場は日海センターを信じて29℃という風に変化させてもよいのではないか?と思えます。これに基づき、新しい水温管理表を作りました。



月の前半と後半で設定温度を変え、徐々に生体の様子を見ながら変化させます。設定温度より0.5℃、冬場は低くなることがあるので最低は22.5℃、夏場は高くなることがあるので29.5℃となります。




<結露防止>


 このような「新しい水温管理」の目的として、①そもそも生体に良いはずだ、②電気代が浮く、の他に、もう一つ、またまた人間側の勝手な都合ですが、③結露を防止できる、ということがあることに気が付きました。


 サンゴ水槽を持っている人なら、誰もが経験するのが、梅雨時以降の夏場のジメジメ時の水槽ガラス面の結露です。うっすらと霜が付くようになるだけで、鑑賞の妨げになりますし、ある時水槽の周りが水浸しになり、「わ、漏れてる!」という騒ぎになるのですが、実際にはガラス面が粒々の結露でビッシリとなり、それが垂れたものであることがわかるのです。


 私は空調機を売っていたこともあるので、わりと良く知っているのですが、結露は湿った空気が冷やされ、飽和水蒸気になったときに起こります。つまり、湿った空気の室温よりも水槽の表面温度が低い時に起こります。室温が32℃だとして、水槽のガラス表面が25℃だとすると、その温度差は7℃です。水槽のガラス表面を30℃にすれば、その温度差は2℃なので、あきらかに結露は起きにくくなります。実際に起きるかどうかは湿度によります。


 これらの数値的な関係を図に表したものが、「湿り空気線図」というもので、理系の娘によると学校では習わないようです。赤い曲線が相対湿度で、いわゆる一般に家庭の湿度計で表示される湿度です。一番左の曲線が湿度100%、つまり結露の生じる飽和水蒸気の条件です。



 赤丸が2つありますが、下の25℃で飽和するのは、右軸の0.025の絶対湿度(1gの乾燥空気に0.025gの水)の空気であることがわかります。水平に移動することにより、その空気は、たとえば30℃では相対湿度75%程度であることがわかります。上の方の赤丸、30℃で飽和する空気は、絶対湿度0.027程度でしょうか。


 上のグラフですと、原理はわかりやすいのですが、今一つ、普段、温度・湿度計で見る数値との関係をイメージすることは容易ではないので、こちらのサイトを見つけました。


 気圧、絶対湿度、温度を入力すると、相対湿度が数字で出ます。これを操作し、25℃で結露する絶対湿度は1㎏の乾燥空気当たり24g、30℃で結露するのは31gとわかりました。(湿り空気線図における絶対湿度を1000倍にした単位)その空気が、各温度でどのような相対湿度になるのかを表にしました。(なぜか、上記の湿り空気線図の読み取りとはかなり異なるので原因究明が必要ですが、一旦無視します。)



 まずわかることは、水槽表面温度を25℃の場合は、26℃から結露が生じる可能性がありますが、水槽表面温度を30℃に上げると、室温30℃まで結露は生じないことです。前述した通り、室温の方が低ければ、いかに湿度が高くても結露は生じないからです。例えば、28℃ 90%以上では25℃なら結露が生じますが、30℃では生じません。したがって、気温はそれほどでもないが、湿度が異様に高い状況、いわゆる梅雨時の結露は起きにくいことがわかります。


 真夏にも湿度は高くなります。たとえば、気温34℃の場合、水槽表面温度25℃では湿度65%で結露が生じますが、水槽表面温度30℃では湿度83%になるまで生じません。真夏でも結露が生じる可能性はかなり低くなると思います。


 実際に、水槽表面温度30℃で結露が生じる日が、年に何日あるかは、日の最高気温での湿度データを分析する必要があり、そこまで調べてはいませんが、かなり少ないように思います。まあ、人夏過ぎればわかることですので、わかりしだい追記します。




<日周の温度差管理>


 一日の中での温度管理も、プラス・マイナス0.5℃で良いのか?考えてみました。一般に、室温は日中に高く、夜間は下がります。とくに、ここで提唱しているように水槽目標温度を上げた場合、たとえば、26℃の目標温度で、室温が24℃程度の時、水槽の水温が25.5℃に下がった瞬間にヒーターを作動させる必要はあるのでしょうか?なりゆきで放っておいても、24℃までしか下がらないはずです。それでも良いのであれば、あるいは、その方が自然だとすると、無駄な電気を使っていることになります。かといって、無制限に水温を下げてよいわけはありません。


 これを検証するために、設定温度+0.5℃ ~ 設定温度-A℃(Aは可変)という水温管理システムを考案えました。具体的には、サーモスタットのヒーター側のAC出力に、もう一つのサーモスタットを重ねて制御します。元のサーモスタットの目標温度が26℃だとすると、追加したサーモスタットは24℃に設定するということです。これで、理論上ヒーターとクーラーの目標温度に解離が生じ、その間は成り行きになります。実際には、センサーの違い、センサーの水槽内の場所の違い、サーモスタットの精度の問題がありますので、水温とヒーターの作動状況をよく観察して追加したサーモスタットの設定温度の調整を行う必要があります。


 2つのサーモスタットを使用する場合、気を付ける必要があります。単純にそれぞれのセンサーを水槽に投入してしまうと、ヒーターとクーラーが同時に作動し続けるという「究極の無駄」が生じる可能性があります。クーラーのセンサーがヒーターの近くにあり、ヒーターのセンサーがクーラー側からの出水の近くにあったとします。ヒーターが稼働すると、近くのクーラーのセンサー―が感知し、水温が高いのでクーラーも作動させます。クーラーからは冷たい水が出ますので、出水近くのヒーターのセンサーが感知し、水温が低いのでヒーターも作動させ続けるといった具合です。こうしたことは、2つのサーモスタットの設定温度の違いや誤差からも生じ得ます。上記のように、直列に繋げば、一つ目のサーモスタットでクーラーかヒーターのどちらかしか通電できませんので、絶対にそのようなことは起きません。




<おわりに>


 このブログエントリーは多くの人に向けたものではありません。どちらかというと、自身の備忘録的な目的が強いものです。したがいまして、新しい発見があった場合は、追加したり、部分的に書き換える可能性もあります。とくに、生体の反応についてはやってみなければ分からないことが多いはずです。リーフ・アクアリウムのマニアの方で、一度読んで気になった方は、しばらくしてまた読んでみてください。




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