新型コロナの第二波と今後
- jeremmiemoonchild
- 2020年8月2日
- 読了時間: 13分
更新日:2020年9月25日
ここで整理するのは、以下の項目です。
1.新型コロナは問題なのか
2.アジアで感染者・死者が少ない
3.日本の7月末の状況
4.対策
1.新型コロナは問題なのか
なんだかよくわからないけど、メディアが騒いでいるので新型コロナは怖い病気と思う人が多い一方、「コロナは風邪」と信じたり、そのように断言すらする専門家さえ散見されます。新型コロナは怖い病気なのでしょうか、それとも、風邪やインフルエンザ程度の病気でことさら特別視することはないのでしょうか?
結論から言うと、風邪やインフルエンザとは決定的に異なる恐い病気です。それは、
「70才以上の方が感染すると、10%以上の割合で1ヶ月以内に死亡にいたる」
からです。これは、当初に武漢、ダイアモンド・プリンセス号、イタリアで報告され、その後の日本を含むあらゆる国で一貫して確認されています。感染者における死亡率をCFR(Case Fatality Rate)といいます。

日本も同様です。

かんたんに言うと、70代以上の体は30代以下の体に比べ、新型コロナに感染すると100倍死にやすいのです。年代によりなにがそれほど違うのかについては諸説ありわかっていません。免疫の暴走などが挙げられています。
高齢者だけでなく、全体の感染者における7月末時点でのCFRは世界で4%程度です。国によって異なりますが、これは高齢者以外の感染がどれだけ多かったか、あるいは検査をどこまで幅広く行ったか、によるものが大きいです。

人口構成上の高齢化率にもよります。これは、横軸に年齢の中央値で高齢化率を、縦軸にCFRを表したものです。ヨーロッパで両方が高く、アフリカで両方が低いのが見て取れます。もちろん、数字が事実を表しているかは常に疑いを持つべきです。日本も含め、分母である感染者数や分子である死者数を、その国が正確に把握せず、誤ったCFRが表示されている可能性はあります。

下の赤い棒グラフの通り、インフルエンザでもCFRの高齢者への偏りは見られますが、70才以上の感染者の死亡はたったの0.02%(受診患者1万人当たり2.4人)です。新型コロナはインフルエンザよりも400倍高齢者の死亡率が高いのです。青い棒グラフの人口当たりの死亡率に高齢者への偏りが少ないのは、インフルエンザの場合は致死率とは反比例した年代別感染者数があるからです。

このグラフの通り、高齢者ほどインフルエンザの感染は少ないのです。考えてみると、仕事をしていない高齢者の感染機会は、家庭内、買い物、通院、習い事、会食、施設に収容されている場合は施設内と限られています。アクティブな世代よりもはるかに感染症にかかりにくいことをインフルエンザの感染率は示しているのです。年代別死亡率のところのグラフを見ると、新型コロナでもこの傾向はありますが、インフルエンザほど極端ではありません。日本の場合、検査自体が重症者=高齢者に偏っていることは確実です。

それでも、流行により国内で数千人が亡くなる年があるインフルエンザと比較し、新型コロナの死亡者の1,000人はぜんぜん少ないではないか、という議論があります。インフルエンザは数千万人が感染する季節性の感染症です。新型コロナの感染者数は現在3.5万人で、多くの対策や自粛努力によりインフルエンザの1000分の1近くに抑えられているからです。
もし、新型コロナが3千万人近くいる70才以上の高齢者のうち300万人に感染すれば、その10%の30万人以上が亡くなる計算になります。

現在、日本には1,000人しか死亡者がいないのだから、そんな馬鹿なことは起きないと思われるかもしれません。しかし、現実に人口が日本の2.6倍ていどのアメリカでは、すでに15万人が亡くなっています。日本の7月の感染拡大を見ても、増え続ける世界の新規感染者数のトレンドを見ても、インフルエンザのような季節性はまったく期待できなくなりました。

「老人はそうでなくても死ぬものではないか?」と思う方もいるかもしれません。これも間違いです。人口統計から、70才代の方が平均して1ヶ月以内に亡くなる可能性は、男性で0.3%、女性で0.1%(表は年間なので、その約12分の1)です。95才までは、「老人はよく死ぬものだ」などと考えるのは日本では間違いです。

自分の死という最大の問題ですら、1%を切る可能性のことは、99%以上起きないのでふつうは意識上ではその問題を排除し、楽しく生きていけます。ですが、もし私が70才以上で新型コロナに感染したら、10%以上の確率で死ぬわけですから、その余裕があれば遺言を書いたり、私物を整理したりするでしょう。ガンの告知を受けても、余命1ヶ月ということは極めてまれです。
また、死亡だけに着目してきましたが、その数倍の患者が重症化を経験しますし、生還しても多くの重大な後遺症を伴います。どのような苦しい思いをするかはテレビなどでご覧の通りです。
一方、20代などの若年層にとっては、自分のことだけであれば「コロナは風邪」と思ってもよいかもしれません。感染後の死亡率は20代で0.01%、30代で0.05%ですし、無症/軽症も多く、重症化も少ないからです。しかしながら、若年層の感染が若年層だけに留まる保証はありません。死にいたる高齢者に伝搬するため全年齢層での感染を抑える必要があります。
「だったら、老人は死んでも構わない」というような暴論まで飛び出していますが、それは文明の基礎となるあらゆる価値の否定となりますので、ここでは議論すらしません。
2.アジアで感染者・死者が少ない
新型コロナによる死亡者が何万人もの西欧と、日本は異なると耳にします。こちらが人口100万人あたりの死者を横軸、感染者を縦軸に配したものです。

こちらはアジアです。中東はアジアに含まれるのですが、それを除くと東アジアの国々は左下に偏っていることがわかります。縦軸も横軸も対数なので、双方ともにヨーロッパとは100倍の差があることがわかります。日本は出ていませんが、South Koreaの近辺で東アジアにはもっとうまく対処した国があります。

世界の地域や国による違いがなにによるものかが取りざたされています。考え得るものをすべて列挙します。
<ウイルス自体>
A-1 ウィルスの株・変異
<国の立地>
B-1 気候
B-2 地形(海/陸)
<防疫>
C-1 防疫対策(検疫、検査・隔離・追跡)
C-2 医療体制(呼吸器、エクモ)
<人の形質>
D-1 遺伝的形質
D-2 免疫(過去のワクチン、類似抗体)
D-3 人口構成(高齢化率)
D-4 平均的健康状態(栄養状態、肥満率、高血圧率、糖尿病率、服薬)
<文化>
E-1 食文化(納豆、ミソ、醤油)
E-2 衛生観念(マスク、土禁、ウォシュレット)
E-3 コミュニケーション(ボディタッチ、声の大きさ)
残念ながら、現段階でわかっていることは少ないです。過去のBCGワクチンも魅力的な説です。
ただし、死亡率で100倍もの差を、BCGを含む<人の形質>で説明しようとするとダイアモンド・プリンセス号が立ちはだかります。3,711名の全乗船者のうち、本国へ戻った時の資料から、日本人は62%の2,308名と推定されます。日本人の死亡率が0.39%なのに対し、外国人の死亡率は0.29%とむしろ低いです。クルーは若い人の可能性が多いので、クルーを除くと外国人死亡率は0.55%ですが大きな差といえるのでしょうか。325名のアメリカ、169名のオーストラリアから死者がでていないことからも、アジア人が西洋人よりも形質的に新型コロナに強いとはとても見えません。(帰国後、3/1にオーストラリアで1名の死亡あり。)

残念ながら死亡された13名のリストです。9名が日本人なので69%と乗船者比率に呼応します。年代の高い方から先に亡くなられていることが読み取れます。

ちなみに、乗船者という大集団の全数PCR検査された日本では貴重な年代別のデータです。感染率は高齢者の方が高いのが見れますが、高齢感染者における有症率はむしろ低いように思われます。これは、高齢者においても一定の無症感染者がいることを物語ります。多くの検査をし、分析することにより、新たな知見に結びつく例です。

私が今、再度着目しているのは、マスクです。日本を含むアジア諸国では、マスクの着用に対する抵抗が低いです。西洋人がマスクに抵抗があることは多く報道されています。
とくに、感染が飛沫や3密下でのエアロゾルが主流と考えると、マスクの着用により感染率が下がるのではないかということです。リゾート気分満喫のダイアモンド・プリンセス号では問題発生までマスクは使われなかったと考えられます。
3.日本の7月末の状況
7月になり、再度感染者数が増加しました。政府は死者と重症者数が少ないこと、ICUやエクモの空き状況が十分なことから、再び緊急事態宣言を発する状況にないと言っています。それでよいのでしょうか。今後どうなるのでしょうか。
今までの経緯をかんたんにまとめます。4月上旬の600人/日をピークとする感染の山があった。4/7に7都府県、4/16に全国の緊急事態宣言が発令され、新規感染者は減り、5/25に緊急事態宣言は解除された。結果として、1000人程度が死亡した。7月に入り、再度新規感染者が増え7月末には1,000人/日を超える。

一方、現在のところ、感染者が4月の2倍の山を作ろうとしている時期に、わずかしか死者数は増加していません。

エクモの装着状況もまったく同様です。

なぜ重症者や死者は増加しないのでしょうか?なんらかの理由により、新型コロナはもう怖くない病気になったのでしょうか?もう、高齢者は感染しないのでしょうか?感染しても重症化・死亡にいたらなくなったのでしょうか?GoToキャンペーンを継続して、気を付ければリゾート地で休養して良いのでしょうか?
私は、現在死者が増加しない理由は2つあると思っています。
一つは、よく言われるように、7月の感染者の山の中に高齢者が比較的少なかったということです。これは今までの検査が重症者=高齢者に偏っていたためで、軽症・無症=若年層にまで検査を広げたことによります。こちらの横軸は一人の感染者を見つけるために、どれだけ検査をしたかを示し、縦軸にCFRを示します。検査対象を広げれば、死亡率=高齢者の含まれる比率が減ることがわかります。良く検査している国で、CFRが1%台になるということは、若年層の感染者は現在把握しているよりも3倍程度あることになります。

それでは、いままで見えていなかった軽症・無症の若年層の感染が可視化されただけで、高齢者の死亡リスクは高まっていないのでしょうか?そんなことはありません。下のグラフの通り6月に比べ高齢者の感染も7月には増えています。
唯一の期待は、ダイアモンド・プリンセス号で見られた高齢の無症感染者が可視化されただけだという見方です。無症であり続ければ、高齢者でももちろん死にはいたりません。ここで問題になるのが、検査方針です。いったいどういう条件の人を検査しているのでしょうか。どのような環境でどのような症状の人が検査されているのかがよくわからないのです。メディアやSNSから聞こえる限りでは、症状があり検査を切実に希望しても受けられない人がいまだにいる一方、夜の街の従業員は無症でも全員検査をしているようです。このような恣意的な状況を聞く限り、高齢者について無症・軽症の感染が可視化される検査方針とはとても思えません。また、ダイアモンド・プリンセス号での無症感染の高齢者とほぼ同数以上の有症感染がいることも忘れてはいけません。高齢者において無症感染しかいないという状況はあり得ないのです。したがって、10%が死に至る有症の高齢者が増加していると考えられます。

まだ、エクモの装着が増えていないことはすでに示しましたが、人工呼吸器の装着数は不気味な増え方をしています。ふつう、人工呼吸器を装着した人の中から、それでも肺機能の低下で十分に酸素が血液に行きわたらない場合、エクモを装着して体外で血液に酸素を送ります。つまり、エクモ装着の増加の前に人工呼吸器装着の増加が起こります。

4月の緊急事態宣言発令時と比較すると、実際にはすでに高齢者の感染は上回っています。

死亡者が増加しないもう一つの理由は、治療技術の向上で感染の判明から死亡までの期間が延びたということだと思っています。このチャートは私が常に作成しているものですが、赤線は感染者の4.7%が平均して2週間後に亡くなるという想定です。実際の7日間移動平均の黒線と5月上旬までは一致しているように思えました。ところが、それ以降その想定よりもさらに2週間程度遅れて実際の死者が発生するようになりました。幸いにも救える命ができたことも事実だと思いますが、それが主であれば赤線を黒線が下回るはずです。亡くなるまでの平均入院日数が4週間程度に増えていると思います。これにより、5月のCFRは17%と以上に高い数字になりました。

東京都などで対策が打ち出されましたが、8月中は感染者は増え続けます。残念ながら、高齢者の感染も同様です。したがって、死亡者も4週間以上遅れて山となります。高齢者の感染者の増加傾向により、さらなる1000人、あるいは2,000人以上の死亡者が9月末にかけて出るのが現実的な懸念です。あたりまえですが、公金を使って感染機会を増やす「GoToキャンペーン」など即時中止すべきです。政策的混乱の責任は、先を見越さず人命も優先せずに政策を推進した政府が取るべきです。
4.対策
実は私は、緊急事態宣言後に新規感染者数が減少していくのを見て驚きました。欧米流の「生活に欠かせない仕事=エッセンシャル・ワーカー以外は出歩くな」という”ロックダウン”と比較して生ぬるく、7割方の人はふつうに通勤し仕事をしていたからです。
しかし、現実に日本では新規感染者数の減少に有効だったわけですから、緊急事態宣言のなかでなにが有効だったのかを見極め、再度緊急導入する必要があります。なにもしなければ、一方的に感染者も死者も指数関数的に増加の一途をたどります。
感染は接触感染か、飛沫・エアロゾル感染と言われています。当初は後者が専門家の間で疑問視されていたので、いまだに「手洗いうがい」が一番に推奨されます。しかし、今まで見てきたクラスターは、ダイアモンド・プリンセス号、スポーツジム、音楽クラブ、高齢者施設、病院など、3密を想起させるものばかりです。基本的な感染形態は、エアロゾル・飛沫感染と順序を変えるべきだと思います。
このことと、国際比較からもマスクは有用と考えられます。そうすると、マスクなしの3密を集中的に減らす必要があります。一番は外食における飲酒シーンです。ふつう居酒屋からクラブまで密閉空間ですし、酔えば無意識に声は大きくなり、話はいつの間にか長くなります。ウィルスのエアロゾルが充満するわけです。東京都は酒の提供時間の制限をはじめましたが、もっと強く、広く、外食における酒の提供は制限すべきでしょう。
もう一つは、PCR検査です。こちらは人口千人当たりの検査数ですが、日本の検査数はあまりにも少ないので、実態がよくわかりません。感染症では放置すればどんどん増えるわけですから、感染者を見極めて隔離するのは基本中の基本です。

もう武漢での発生から半年も経過し、日本中の隅々まで蔓延している可能性があるわけですから、すみやかに大規模検査体制に移行すべきです。専門家も含めて日本の中だけで大手を振るう、いわゆる「PCRスンナ派」に惑わされてきましたが、実害を蒙る医師会などを中心に検査体制は広がりを見せています。
真の感染者が少ない集団では擬陽性の方が多くなるという「特異度」については、陽性者の再検査をすればなんら問題ありません。再検査数も1回目の1000分の1などで費用も問題になりません。

発症のタイミングによりウィルスが検体に含まれないなどの理由による、検査の「感度」で偽陰性も発生します。そもそも「陰性の検査判定を受けた者は、いままで以上に動き回り感染源となる」というスンナ派の前提自体が理解不能ですが、検査時には念のため以下のような「偽陰性に関する注意」を促すことで回避できます。
「陰性であっても、検査感度は7割なので、実際の感染率の3割ほどの割合で感染している可能性はあります。(感染率が0.1%の場合0.03%。)その場合、他の人に移す可能性もありますし、今後新たに感染する可能性もありますので、今まで通りに注意して行動してください。」
また、複数検体を取る、ウィルスが検出しやすいときに取るなどの工夫により、感度自体の改善も見込めます。
今後の見通し
最後に現時点における今後の日本を俯瞰してみます。
8月:3,000~5,000人/日の新規感染の山、外食で酒の制限開始
9月:新規感染減少に転じる、追加死亡1,000~2000人 、大量検査開始
10月:50人/日の新規感染まで減少、大量検査の拡大
11月:20人/日、大量検査の継続
12月:0人/日、終息宣言
大量検査し、「完全封じ込め」に持ち込まなければ、12月は7月と同じようにまた新たな感染者の山の始まりとなります。ウィズ・コロナなどという根本的に誤った方針ではなく、ネバー・コロナの明るい2021年を皆様と迎えたいものです。
最後に政府の方に申し上げます。
「クオモを見習え、できないのなら、リモートで良いので感染対策責任者はクオモに依頼しろ。英語で事実だけを伝え、指示を仰げ。すべての邪念、しがらみは捨てろ。」
一市民の独り言です。
2020年8月2日
ジェレミー・ムーンチャイルド
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